研究課題/領域番号 |
18K17359
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
木戸 尊將 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (40633152)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 亜鉛 / 免疫 / マクロファージ / Tリンパ球 / GATA-binding protein 3 / interleukin-4 |
研究実績の概要 |
【目的】必須微量元素である亜鉛が不足すると、免疫機能が低下し、炎症反応を生じることが報告されている。しかし、その機序については解明されていない。本研究では、亜鉛欠乏ラットを作製し、免疫機能の中枢である脾臓のヘルパーTリンパ球(Th1およびTh2)とマクロファージサブタイプ(M1およびM2)の分化誘導への影響について検討した。さらに、IL-4の腹腔内投与あるいは亜鉛補充を行い、亜鉛欠乏による炎症反応を抑制できるか検討した。 【方法】SDラット(5週令:雄)に亜鉛欠乏食(亜鉛無添加)または亜鉛標準食(0.01%亜鉛含有)を毎日17gずつ6週間与えた。さらに亜鉛欠乏食のうち、一つの群には、IL-4の腹腔内投与(100ng/rat/週3回)を行い、もう一つの群には、亜鉛標準食を4週間与え亜鉛を補充した。 測定項目-①脾臓のTh1(IFN-γ)/Th2(IL-4/IL-13)サイトカイン陽性細胞数、M1/M2マクロファージ数、②マクロファージから産生されるサイトカイン(IL-1β, MIP-1α)のmRNA発現、③GATA-3のタンパク量。 【結果】亜鉛欠乏群で、①M2マクロファージ、IL-4/IL-13陽性細胞数の減少、②IL-1βおよびMIP-1αのmRNA発現の増加、③GATA-3のタンパク量の減少を有意に認めた。亜鉛欠乏/IL-4腹腔内投与群と亜鉛補充群で、①M2マクロファージ、IL-4 /IL-13陽性細胞の減少の抑制、②IL-1βとMIP-1αのmRNA発現の増加の抑制、③亜鉛補充群でGATA-3のタンパク量の増加を有意に認めた。 【考察】亜鉛欠乏による炎症反応には、Th2リンパ球-M2マクロファージ経路が関与することが明きらかになった。そして、この炎症反応はIL-4投与または亜鉛補充により抑制できることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
進捗状況として「亜鉛欠乏症のTh2リンパ球-M2マクロファージ経路を介した炎症反応増強の機序解明」は、亜鉛欠乏ラットの脾臓を用いて研究する内容であった。研究成果の一部は1月に英語論文として受理されている。 そこで、現在は亜鉛欠乏の炎症反応の機序についてマクロファージやTリンパ球以外の免疫担当細胞の関与について研究を進めている。さらに、末梢血や胸腺などの免疫担当細胞が関与する臓器と炎症反応についても検討を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
亜鉛欠乏の炎症反応について、明きからとなった「抗炎症型Th2リンパ球ーM2マクロファージ経路の低下」以外の他の要因も炎症反応の増悪に関与しているかどうかを追求する必要がある。そこで、急性炎症の指標である好中球について着目する。脾臓及び末梢血の好中球やその遊走因子であるケモカインを測定することで、亜鉛欠乏の炎症反応に関与しているかどうかを明らかにする。さらにIL-4の投与や亜鉛補充を施すことで、炎症反応を抑制/回復させることができるかどうかについても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画の「亜鉛欠乏症のTh2リンパ球-M2マクロファージ経路を介した炎症反応増強の機序解明」の一部は測定が終了した。故に予定よりも動物実験の回数が減り、使用する動物飼育費や特殊飼料費への使用額が少なかったことが理由である。 次年度は、測定を実施できていない項目や他の臓器(胸腺や末梢血)を検討するため動物実験の回数や特殊飼料の発注数を増やす予定である。
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