研究実績の概要 |
昨年度までに、ショウガ科生薬である生姜と良姜のUCP1発現量の増加作用を有する成分の存在を明らかにしたため、その活性成分の同定を行った。その結果、UCP1発現量を増加するいくつかの活性画分を得ることができた。その中には、1,8-シネオールやTRPチャネルの活性化能を有するとされる桂皮酸類も含まれた。しかしながら、どの活性成分についても良姜抽出物ほどのUCP1発現増加作用は認められなかったことから、単独での作用ではなく複数の化合物による影響である可能性も考えられた。 良姜抽出物処理による褐色脂肪細胞の活性化経路について、処理によりミトコンドリアの数と膜電位の上昇傾向が認められた。昨年度、良姜抽出物処理によりAkt/mTORシグナル伝達経路が促進されたことを報告している。ミトコンドリア機能は、Akt/mTORシグナル伝達経路に一部制御されることが知られており、今後より詳細な検討が必要であると考えられる。 高脂肪食負荷マウスとストレプトゾシン誘発性糖尿病モデルマウスに生姜、良姜の各抽出物投与を行ったところ、肥満抑制作用に加えて血糖値上昇の抑制作用が認められた。さらに、生姜抽出物投与マウスにおいて、褐色脂肪細胞のGLUT1発現量の増加が認められた。褐色脂肪細胞の活性化には、グルコース取り込みも重要な機能の一つである。そのため、良姜抽出物によるGLUT発現量とグルコース取り込みに対する影響について、in vitroアッセイによる検討が必要であると考えられる。
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