近年、規制薬物の構造を基に設計された『危険ドラッグ』の流通が世界的な問題となっている。しかし危険ドラッグについての学術論文は薬物同定や検出事例報告が多く、薬理活性やヒトでの代謝情報は散発的に見受けられるのみである。本研究では危険ドラッグ成分のうち事件・事故事例が多い合成カンナビノイド系薬物を対象とし、構造ごとに系統立てて合成した薬物を用いて、薬理活性の評価及びヒト代謝物の同定を実施することを目的としている。 本年度は引き続き分析対象となる合成カンナビノイド薬物の合成を行った。その結果、新たに計13種類の合成カンナビノイド系薬物の合成を達成した。得られた合成カンナビノイド系薬物について、ヒトカンナビノイド受容体機能評価試験を実施し、すべてが受容体アゴニストとしての活性を有することを確認した。さらに一部の薬物に対しては受容体活性化能について多角的に評価するため、昨年度に引き続き原理の異なる別の評価系を用いた試験についても実施した。この際、実験条件(化合物溶液の溶媒濃度・希釈倍率)について比較検討を行い、最適化を図った。 また、類似構造を有する合成カンナビノイド系薬物について、肝ミクロソームを用いたin vitroの系で代謝実験を行った。その結果、薬物の含窒素骨格の違いが代謝を受ける速度に大きく影響することが推察された。生成した代謝物について構造推定を行ったが、合成困難であったため完全な同定には至らなかった。
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