重症熱性血小板減少症候群(SFTS)やツツガムシ病、日本紅斑熱などの「ダニ媒介性感染症」は、過去5年間で患者発生が倍増し、近年注目を浴びる疾病である (IDWRより)。SFTSはウイルス、ツツガムシ病及び日本紅斑熱はリケッチアによる感染症で、どちらも患者の病原体遺伝子の検出あるいは血中抗体の検出により診断される。しかし、前者は操作が煩雑であること、後者は抗原となる病原体を保有するためのP3施設を要することから、実施施設は限られている。一方、SFTSや リケッチア感染症は重症化した場合の致命率が5~30%と高く、より迅速で簡便な検査方法の開発を必要としている。 本研究では、SFTSウイルス及びリケッチアの組換え膜タンパク質及びそれらを抗原にしたモノクローナル抗体を作製し、それらを用いて簡便かつ迅速に病原 体抗原及び血中抗体を検出する酵素免疫測定法(ELISA法)やイムノクロマト法を確立することを目指す。最終年度は診断法を開発するうえで必要な抗原となる各種組換えタンパク質をウエスタンブロット法で確認後に精製し、ELISA法の検討を行なった。SFTSウイルスについては、大腸菌系を用いて組換え糖タンパク質GnとGcの作製を試みたが、Gnのみ組換えタンパク質の作出ができた。また、ツツガムシ病リケッチア、日本紅斑熱リケッチアについては大腸菌系を用いて組換え47 kDa及び56 kDaの外膜タンパク質及びrOmpBの外膜タンパク質の作製を試みたが、ツツガムシ病リケッチアの47 kDaタンパク質の組換えタンパク質の作出ができた。組換えGn及び47 kDaタンパク質を大量培養して精製を試みたが、ELISAに必要なタンパク質量を得られなかった。今後はベクターや発現大腸菌等の条件検討を実施する。
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