研究実績の概要 |
本年度は昨年度からの成果を統合し、Vaccine誌に原著論文を発表した(Tsuzuki et al., Modelling the optimal target age group for seasonal influenza vaccination in Japan, DOI:10.1016/j.vaccine.2019.11.001)。海外の先行研究同様、日本でも小児を優先したインフルエンザワクチンの接種政策がより費用対効果に優れることが示された。同時にインフルエンザワクチンの接種率を相応に高めること自体が現行の政策に対して優勢であることも示された。 また、疾病負荷等分析に用いた幾つかのパラメータが海外の先行研究に拠っていることを鑑み、日本におけるインフルエンザ様疾患(Influenza-like illness, ILI)とインフルエンザの疾病負荷を推定した。結果は国際学会で発表され(IDWeek2019)、BMC Public Healthに原著論文として発表された(Tsuzuki and Yoshihara, Characteristics of Influenza Like Illness Management in Japan, in press)。日本におけるILI、インフルエンザそれぞれの疾病負荷をQOLの形で比較したところ、欧州の先行研究と大きな差は見られなかった。ただし、その受療行動や医師のプラクティスには大きな差異が認められ(感冒症状で医療機関を受診する割合が高い、医師がインフルエンザ迅速検査を実施し抗ウイルス薬を処方する割合が高い)、日本特有の現象と考えられた。疾病負荷に大きな差が見られないにもかかわらずILIとインフルエンザで余儀なくされた休暇の日数に明らかな差が見られ、学校保健法によるインフルエンザの休校期間が影響していると考えられた。
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