研究課題
基本再生産数R0は,一人の感染者が生み出す二次感染者数の平均値で与えられ,ワクチン接種率の目標設定や累積罹患率の予測など,感染症制御に係る保健医療政策の判断に欠かせない指標である.しかしながら,感染症の観察データは症候群に基づく患者数データに頼ることが多く,また小規模流行や流行の初期では観察情報が少ないため,R0の推定が困難な事例が多々存在する.本研究では,従来の理想的な観察データに基づくR0の推定を補間可能な不完全情報や間接情報を用いて実現することを目標としており,研究5年目である本年度は以下の研究を行った.Carrying capacityを加味したモデル研究では,常微分方程式によりSEIRモデルを記述し,人口が一定という仮定のもと,R0を算出した.また,同モデルに確率的変動を加え,確率微分方程式によるSEIRモデルを構築した.構築したモデルにおいて人口の動きを一定とした場合のR0を算出する式を導出した.ランダム微分方程式によるモデルでは,Disease-free steady stateとなるパラメータの条件を定式化した.さらに,EとIのコンパートメントが増加する領域を求めた.人の移動による感染症伝播については,感染症の流行をSIRモデルおよびSEIRモデルで記述し,人の移動を生存時間の形で記述したhybrid modelを構築した.SIRモデルを用いる場合,到着時間を記述するhybrid modelは解析的に解くことができる.これにより,到着時間と各パラメータ値やR0の関係を明らかにした.
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Mathematical Modelling: Theory and Application, Contemporary Mathematics, AMS
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