研究実績の概要 |
わが国の正常妊娠・分娩は保険外診療の枠組みで取り扱われており、妊娠・出産に関する全国規模のデータは極めて限られている。本研究ではレセプトNDB特別抽出データを利用して、全国の多胎妊娠を含む帝王切開症例の疫学データについて地域別・施設別に記述を行う。 厚生労働省保険システム高度化推進室に対して、レセプトNDBの利用申請を行い、平成26年1月~12月のレセプトで診療行為レコードに帝王切開術K898-1, 2, 3を含む患者についてそれぞれ術前10ヶ月、当月、翌月の計12ヶ月分を抽出し匿名化した特別抽出データの提供を受けた。保険者番号・被保険者番号・性別・生年月日から作成されたハッシュ値のID1と 氏名・性別・生年月日から作成されたハッシュ値ID2のいずれかが同一のレセプトは同一人物から発生したと見なし、個人別にデータを統合した。 平成26年の帝王切開症例数は189,472例で、そのうち初診時から保険診療が行われている可能性が高い多胎妊娠症例8,529例について集計した。何らかの産科傷病名が初めて登録された時(産科初診時)は多胎妊娠症例の62%が病院、38%が診療所を受診していたが、帝王切開は95%が病院で実施されていた。初診時と帝王切開時で二次医療圏が異なる者は1996例(23.4%)で年齢階級が上がるほど増加していた。都道府県が異なる者は886名(10.4%)で20代後半から30代前半でやや高い傾向にあった。妊産婦緊急搬送入院加算が計上された多胎妊娠症例は637例(7.5%)で若年者ほどその割合が高かった。帝王切開術の前後30日以内に保存血輸血を行った者は262名(3.1%)で年齢階級が高いほどその割合が高かった。
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