本研究の目的は、地域高齢者における血管機能指標と認知機能障害の進行およびフレイルの進行との関連を明らかにすることである。本研究で血管機能障害が認知障害、フレイルの進行を予測することが明らかにされることにより、臨床医学・予防医学の発展と成人特に高齢者保険の向上に大きく寄与することが期待される。データの構築のため、住民健診を受ける地域一般高齢者を対象として、血管機能検査および認知障害、フレイルの評価を住民健診に組み込むこととした。 2018年度及び2019年度において、住民健診実施機関である群馬中央病院と綿密なミーティングを行い、実施する検査スケジュールの計画を立てたのちに約1000例の被検者から検査情報を収集した。健診項目に加えて測定した項目は以下のとおりである。 血管機能検査:心臓足首血管指数(cardio-ankle vascular index: CAVI)、足関節上腕血圧比(ankle-brachial index: ABI)、増大係数(augmentation index: AI)、中心血圧、認知機能検査としてMMSE (Mini Mental State Examination)を用いてスコア化、フレイル検査として基本チェックリスト(厚生労働省作成)を用いてスコア化。 2020年度は、収集データの解析を実施した。939名の解析対象者のうち、70歳以上の237名の被検者において、CAVIとフレイススコアの有意な正の相関を認めた。この関係は、年齢、性別、心血管危険因子等の調整後の有意だった。一方、中心血圧やAI等他の因子とフレイルスコアの関連は認められなかった。また、血管機能検査値と認知障害の関連は認められなかった。 本研究の結果から、血管機能検査のなかでも、CAVIはフレイルと関連することが示唆された。
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