本研究では、当初厚生労働省からレセプトデータを借用し、スチェルチェス積分を用い、実際の患者の人口ピラミッドを反映して2型糖尿病患者の寿命と生涯に使う医療費を算出することを目指した。レセプトデータの借用が難しく、バイオバンク・ジャパンコホートデータを分析した。 患者の年齢ごとの全死亡率を直接計算した。これを細小血管合併症・大血管合併症ごとに行い、糖尿病性腎症を合併している2型糖尿病患者が最も寿命が短いことを明らかにした。死亡原因別にもこの分析を行い、2型糖尿病患者の代表的な死因であるがん、虚血性心疾患、脳血管疾患、肺炎を含む感染症、壊疽、消化器疾患、大動脈解離のすべての死亡率について糖尿病性腎症を持つことが最も死亡率を上げていることがわかった。 2型糖尿病患者で糖尿病性腎症第2期または第3期を持つ場合、痩せた体格にあたる18.5 kg/m2未満のBMIであることは、現在喫煙していることと同じくらい寿命を縮めている。死亡原因が虚血性心疾患であることに対しても痩せた体格は最も強力なリスクファクターとなり、この影響は微量アルブミン尿に比べて顕性アルブミン尿となっていること以上のものであった。つまり、初期の糖尿病性腎症患者で痩せた体格は高い死亡リスクを表している。 これらの解析に加えて、新たに糖尿病患者のアレルギー疾患合併割合に付いての研究を行った。結果は、糖尿病患者と脂質異常症患者とでアレルギー疾患の有病率に差はないというものであった。原稿を用意し、論文として出版する予定である。
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