研究課題/領域番号 |
18K17378
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
国村 彩子 滋賀医科大学, アジア疫学研究センター, 客員助教 (30803952)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 血清PCSK9値 / 潜在性動脈硬化 / 認知症 / 脳萎縮 |
研究実績の概要 |
近年、プロ蛋白転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)を標的とした薬剤が開発され、大規模臨床試験により、その心血管イベント抑制に対する効果が次々と報告されている。現在、PCSK9は動脈硬化の新たな治療ターゲットとして急激に注目されて いる。一方で、PCSK9に関しては、歴史的に治療薬開発が先行し、一般地域住民における実態や心血管イベント予測能について未だ不明な点が多い。本研究は、一般地域住民を対象に詳細な危険因子測定や潜在性動脈硬化指標、脳萎縮について調査を行っ てきた既存の前向きコホート研究に、新たに血清PCSK9値の測定を追加し、日本人における血清PCSK9値の分布やその関連要因およびLDLコレステロール値との関連の強さ、さらには潜在性動脈硬化や脳萎縮との関連について明らかにし、動脈硬化性疾患や認知症の新しい予防策開発を目的とするものである。
平成30年度は血清PCSK9値の測定を行った。2006年から2008年にベースライン調査を実施した対象者約1200人のうち、2010年から実施した追跡調査に参加した約850人のうち、脂質異常症の治療薬を使用していない対象者について、その保存血液検体を用いて血清PCSK9値を測定した。血液検体を用いた血清PCSK9値の測定にはELISA法や質量分析法などの方法が存在するが、ELISA法が一般的である。これまでPCSK9について、LDL受容体分解活性をもつ成熟型PCSK9と細胞内酵素であるfurinにより切断され、分解活性の低いfurin-cleaved PCSK9と2つのサブタイプが同定されているが、両者を区別して測定することが困難であった。2014年にBML社と国立循環器病研究センター(斯波真理子先生)の共同開発により両者を区別して測定する新たなELISA法が開発された。本研究はBML社に測定を委託した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、血清PCSK9値の測定を行うことができた。 平成31年度は、既存のデータベースとの突合およびデータクリーニング、データの解析を行っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度は下記の事柄を行う。 ①統合データベースの構築:社会的要因、生活習慣、その他の血液・尿検査結果、CTで計測した冠動脈や大動脈石灰化、頸動脈超音波により計測した頸動脈内中膜肥厚やプラーク、頭部MRIによるラクナ梗塞・微小出血・白質病変などの無症候性脳血管障害や脳体積、ABI、PWVなどの多様な潜在性動脈硬化指標や認知機能評価(Cognitive Abilities Screening Instrument等)に関する情報を有した既に構築されているSESSAの既存のデータベースに、本研究による血清PCSK9値の結果を突合する。外れ値や欠損値を確認し、データクリーニングを行う。 ②データ解析および研究成果報告:血清PCSK9値に関して、その分布および生活習慣や社会的要因、古典的動脈硬化危険因子との関連、冠動脈や大動脈石灰化、頸動脈内中膜肥厚やプラーク、無症候性脳血管障害等の様々な潜在性動脈硬化指標や脳萎縮、認知機能との関連について、多変量解析により適宜交絡因子を補正し横断的解析を行う。解析による研究成果は、国内外の学会での発表や国際専門誌での公表を行う。また、アジア疫学研究センターのホームページ等で、マスコミ担当者や一般市民にもわかりやすい形で解説していく(URL http://cera.shiga-med.ac.jp/ 参照)。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、学会参加などのための旅費や研究遂行のための物品費を計上していたが、平成30年度はどちらも要しなかった。平成31年度はデータ解析を行い、研究成果を学会などで公表していく予定である。よって、今回生じた次年度使用額は、学会参加のための旅費や論文校正、解析のための統計ソフトにかかる費用として使用していく予定である。
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