研究課題
近年、プロ蛋白転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)を標的とした薬剤が開発され、大規模臨床試験により、その心血管イベント抑制に対する効果が次々と報告されている。現在、PCSK9は動脈硬化の新たな治療ターゲットとして急激に注目されている。一方で、PCSK9に関しては、歴史的に治療薬開発が先行し、一般地域住民における実態や心血管イベント予測能について未だ不明な点が多い。本研究は、一般地域住民を対象に詳細な危険因子測定や潜在性動脈硬化指標、脳萎縮について調査を行ってきた既存の前向きコホート研究に、新たに血清PCSK9値の測定を追加し、日本人における血清PCSK9値の分布やその関連要因およびLDLコレステロール値との関連の強さ、さらには潜在性動脈硬化や脳萎縮との関連について明らかにし、動脈硬化性疾患や認知症の新しい予防策開発を目的とするものである。平成30年度は血清PCSK9値の測定を行った。2006年から2008年にベースライン調査を実施した対象者約1200人のうち、2010年から実施した追跡調査に参加した約850人のうち、測定値に影響を与える可能性の高い脂質異常症の治療薬を使用していない対象者について、その保存血液検体を用いて血清PCSK9値を測定した。血液検体を用いた血清PCSK9値の測定にはELISA法や質量分析法などの方法が存在するが、ELISA法が一般的であり、本研究でも同方法にて測定を行った。
4: 遅れている
平成30年度には当初の予定通り、血清PCSK9値の測定を行うことができた。しかしながら、平成31年度・令和元年度は研究代表者の出産・育児・家族の介護が重なり、研究遂行が困難となった。令和2年度は職務に復帰し、既存のデータベースとの突合およびデータクリーニング、データの解析を開始したものの、コロナウィルス感染症蔓延に伴い、臨床医としての業務量の増加などにより、解析途上であり、また得られた結果を報告、論文化するまでには至っていない。
令和3年度は下記の事柄を行う。①既に冠動脈石灰化との関連については解析を進めている。学会発表や論文化にて結果を公表していく②頭部MRIによる潜在性動脈硬化指標との関連について解析を進め、結果を広く公表していく③認知機能(CASIスコア)や脳体積との関連について解析を進め、結果を広く公表していく。④modifiableな生活習慣などの冠動脈リスク因子との関連について解析を進め、結果を広く公表していく。
出産、育児、家族の介護、コロナウィルス感染症蔓延に伴う臨床業務増大により、当初の予定通り研究遂行が困難であったため、研究終了を延期した。また、令和2年度はコロナウィルス感染症蔓延に伴い、学会もWeb開催がメインとなり、旅費が不要であった。令和3年度は、助成金を論文化にかかる費用や学会参加関連費用、解析ソフト等にかかる費用に使用していく予定である。
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