(1)心血管病、認知症発症の追跡調査、データベースの構築 福岡県久山町では、1961年以降、町の健康診断の受診者を対象に時代の異なる複数の追跡集団(コホート)を構築し、心血管病および認知症発症についての追跡調査を行っている。本年度は、前年度に引き続き、毎年の健康診断、追跡調査を継続した。さらにこれらの成績を用いて、1988年に久山町健康診断を受診した40歳以上の住民2634人を対象とした24年間の心血管病発症のデータベースを構築した。 (2)体位による血圧変動と認知症および心血管病発症との関連の検討 2018年度に検証した認知症の追跡調査の成績を用いて、体位による血圧変動と認知症発症との関連を検討した。1988年に久山町健康診断を受診した60歳以上の住民1193人を17年間追跡した。対象者を座位、臥位のそれぞれの体位で測定したの血圧値を用いて、正常群(座位血圧・臥位血圧とも140/90 mmHg未満)、座位高血圧群(座位血圧140/90 mmHg以上、臥位血圧140/90 mmHg未満)、臥位高血圧群(座位血圧140/90 mmHg未満、臥位血圧140/90 mmHg以上)、両体位高血圧群(座位血圧・臥位血圧とも140/90 mmHg以上)の4群に分類した。その結果、正常群を基準とした全認知症の多変量調整後のハザード比は、臥位高血圧群で1.9、両体位高血圧群で1.4と有意に高かった。さらに上述の本年度構築した心血管病発症のデータベースを用い、体位による血圧変動と心血管病発症との関連について検討したところ、正常群に比し、臥位高血圧群、両体位高血圧群における心血管病発症の多変量調整後のハザード比は、それぞれ1.7、1.6といずれも有意に高かった。すなわち臥位高血圧、両体位高血圧は認知症、心血管病発症の有意な危険因子であった。 今後、本研究成果を論文化し、国際学術誌に報告する予定である。
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