研究実績の概要 |
WHOは全世界での死亡要因の5.5%が身体不活動であると報告している。日本人を対象とした調査でも日常生活における歩数減少が問題となっている。また、運動や身体活動を始めた者の約半数が数ヶ月後にはそれらの活動を中断されることも報告されている。そのため、身体活動の増加や運動習慣化に関する対策は喫緊の課題である。 そこで本研究は、身体活動を継続するための効果的な動機付けを探ることを目的として、社会貢献(寄付)がどれくらい身体活動増加および継続に有効か否かランダム化比較試験を行った。歩数増加が寄付に繋がる介入期間3ヶ月において、寄付群が目標歩数を達成した平均日数は47.6日(SD: 15.4)、対照群は36.7日(SD:13.1)であり、有意に寄付群は目標歩数を達成した日数が多かった(P= 0.012)。また、3か月の介入期間の内、1か月目、2か月目、3か月目の月ごとの目標歩数を達成した平均日数は、寄付群(15.2日,17.3日, 15.1日)、対照群(12.3日,13.1日, 11.3日)(P : 0.068, 0.018, 0.030)と各月で寄付群の達成日数が多かった。 寄付による歩数増加持ち越し効果を評価するため、介入終了後9ヶ月間歩数調査を行った。介入前の歩数に戻ってくるまでの日数を解析し、寄付群は対照群に比し1.5倍の期間を要していた。社会貢献(寄付)は歩数増加・モチベーション持ち越し効果を有している傾向があることが分かった(P : 0.06)。 これらの結果は性別、年齢、開始時BMIや腹囲の違いによって効果が修飾されない(変わらず認められる)ことを示していた。また、TCI パーソナリティー検査(気質と性格検査)によるPersonalityごとの分析でも各群に寄付の効果の差は認められず、寄付は様々な気質や性格の人に対する身体活動の動機付けとなることが示唆された。
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