最終年度には、「知覚された環境」が被災高齢者の身体活動に及ぼす影響の関連について解析し、その結果を論文にまとめ、国際誌(Journal of Aging and Physical Activity)に報告した。 結果の概要は以下の通りである。 復興公営住宅の居住者と非居住者で、身体活動に関連する「知覚された環境」との関連を検討した結果、復興公営住宅居住者では、周囲の景観を楽しいを感じることと、非居住者(非避難者)では自宅に運動するための用具があることと身体活動に関連が認められた。 避難者は、基本的に避難先の周辺環境を選ぶことが不可能であると推察される。また、避難者のための住居建設にあたり、周辺環境を、身体活動実践のための魅力的な設定に整えることは、優先順位が決して高く設定されていない、という状況が関わっていることと推察される。避難を余儀なくされた被災者に対しては、避難先の居住環境周辺に、ウォーキング、ジョギングなどに適した公園、道路の設置などが望ましい可能性がある。 さらに、この研究で得られた知見を広く発信するための地域活動を実践した。福島第一原子力発電所事故により避難区域に指定された自治体において、避難指示解除後に自宅に帰還した住民に運動するための用具としてバンド(伸長することにより負荷をかけることができる)を提供した。効果検証を行うことはできなかったが、この支援活動は研究に得られた知見に基づいたものであり、負荷を自由に調節できる用具であるため、身体活動促進のために有効利用してもらえたものと考える。
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