研究課題/領域番号 |
18K17394
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
原田 成 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 専任講師 (10738090)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | メタボローム / 腎機能低下 / コホート研究 / 慢性腎臓病 / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
慢性腎臓病は公衆衛生学上の大きな課題であり、透析等に伴う社会的、経済的インパクトも大きいことから、その予防が喫緊の課題となっている。腎機能低下が進展した後に治療・介入することは困難であるため、早期の予防が求められる。効果的かつ効率的な予防を実現するためには、リスクの精緻な層別・個別化による予防への働きかけが求められている。 本研究では、11,002名の大規模血漿メタボロミクス・バイオマーカーとその3年間追跡データおよびを用いて、腎機能の低下を予測するメタボロミクス・バイオマーカーを明らかにする。特に、既知のバイオマーカー(血清クレアチニン、血清シスタチンC、尿 中微量アルブミン)による予測モデルに、メタボロミクス・バイオマーカーを加えることでどの程度予測モデルが向上するかを検討し、メタボロミクス・バイオマーカーの腎機能低下予防における価値を確立する。 血漿・尿メタボロームは合わせて約500種になることと、各々が独立した変数ではないことから、疫学研究で広く使用される一般線形回帰モデルやロジスティック回帰モデルでは適切にデリングできない可能性が高い。そこで、本研究ではメタボロミクス疫学研究で頻用されるO-PLS回帰モデルないしO-PLS判別分析、サポートベクターマシン(SVM)といった機械学習的手法に加え、正則化を用いたElastic net (Ridge回帰やLasso回帰を含む)のような変数選択型の多変量回帰モデルを用いて、低下予測への寄与の大きな代謝物を腎機能低下バイオマーカー候補として絞り込む。 2018年度に6年後追跡調査を実施したため、6年後の腎機能データを2018年度は収集し、6年後の腎機能低下度を加味してバイオマーカー測定対象者を選定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2018年度中に検体の選定とバイオマーカー測定を完了させる計画であったが、ベースラインと3年後の腎機能低下を検討した結果、3年後の腎機能データのみでは検体選定基準として不十分と判断したため、2018年度に実施している6年後の腎機能低下データを得て、これをもって検体選定・測定を行うこととした。 すでに検体選定は済んでおり、速やかにバイオマーカー測定を開始する。
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今後の研究の推進方策 |
ベースライン、2015年度、2018年度の3地点の腎機能低下データをもとに、腎機能低下を予測するための検体選定が済んでおり、速やかにバイオマーカー測定を開始する。血清シスタチンCと尿中微量アルブミンの測定を行う。測定にあたっては、大量の検体を安定した精度で測定可能な検査会社に委託する(会社も選定済)。測定結果を用いて、血清クレアチニンにより推定されたeGFRcre、血清シスタチンCにより推定されたeGFRcys、尿中微量アルブミンがそれぞれ、3年後のeGFRcre、eGFRcysの低下や尿中微量アルブミンの検出をどの程度予測可能かを、一般線形回帰およびロジスティック回帰モデルにより検討する。 さらに、血清シスタチンCおよび尿中微量アルブミンの測定対象としなかった対象者のデータを使用して、ベースライン時の血漿・尿メタボロームにより3年間のeGFRcre低下を予測するモデルを構築する。血漿・尿メタボロームは合わせて約500種になることと、各々が独立した変数ではないことから、疫学研究で広く使用される一般線形回帰モデルやロジスティック回帰モデルでは適切にデリングできない可能性が高い。そこで、本研究ではメタボロミクス疫学研究で頻用されるO-PLS回帰モデルないしO-PLS判別分析、サポートベクターマシン(SVM)といった機械学習的手法に加え、正則化を用いたElastic net (Ridge回帰やLasso回帰を含む)のような変数選択型の多変量回帰モデルを用いて、低下予測への寄与の大きな代謝物を腎機能低下バイオマーカー候補として絞り込む。また、耐糖能異常を有する人の層化解析も実施し、特に糖尿病性腎症と関連するマーカーを検討する。また代謝経路を解析対象とするパスウェイ解析も実施し、腎機能低下と関連する代謝経路を同定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度の予算はすべて2019年度の検体測定に振り分けることとした。 2018年度中に検体の選定とバイオマーカー測定を完了させる計画であったが、ベースラインと3年後の腎機能低下を検討した結果、3年後の腎機能データのみでは検体選定基準として不十分と判断したため、2018年度に実施している6年後の腎機能低下データを得て、これをもって検体選定・測定を行うこととした。 そのため、委託検査費はすべて2019年度に支出することとした。
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