本研究の目的は、日本で唯一の12年間で約7万人の大規模職域コホートデータ(J-SARスタディ)を用いて、心筋梗塞患者の就労に関するエビデンスを集積すること である。 J-SAR Studyの病休データベース等を用いて、2000年1月1日から2011年12月31日までの12年間に、新規に主治医の「療養が必要」と記載された診断書にて心筋梗塞による病休を取得した労働者のデータを収集した。心筋梗塞による病休開始日から365日までの病休者の転帰を、「退職」「死亡」「病休継続」「復職」の4つに分類して、それらをアウトカム(評価指標)とした。「病休継続」は、病休開始日から365日まで療養が継続した労働者と定義した。 12年間のフォローアップ期間中、主治医の「病名:心筋梗塞。療養が必要」と記載された診断書が提出されたのは130名の労働者であった。本研究の心筋梗塞罹患社員の基本属性を表1に示した。男性が124名(95.4%)、女性が6名(4.6%)であり、病休時の平均年齢は53.3歳であった。心筋梗塞罹患社員のフルタイムでの勤務ができるまでの日数の中央値は69日で、参照となるがん罹患社員と脳卒中罹患社員の場合はそれぞれ、201日、259日であり、心筋梗塞罹患社員は、がん罹患社員や脳卒中社員と比較して、かなり早期に、フルタイム勤務ができる健康状態に回復していたことが示唆された。現在、Journal of Occupational Healthに論文を投稿し、Major revisionの状態であり、令和2年度での論文受理を目指している。 また、復職後の心筋梗塞患者の再病休率に関する論文、心疾患患者の病休日数・復職率・退職率などを脳卒中等患者との比較したデータを現在解析中であり、間もなく論文投稿の予定である。
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