研究課題/領域番号 |
18K17397
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
村上 慶子 東北大学, 東北メディカル・メガバンク機構, 助教 (40709200)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 社会疫学 / 健康格差 / 社会経済的要因 / 循環器疾患リスク / 国際比較 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、日本と欧米の比較可能な個票データを用いて、青壮年期における循環器疾患リスク要因(生活習慣、心理的要因、生物学的マーカー)の社会経済的格差を比較検討し、共通点・相違点を明らかにすることである。 初年度である2018年度は、主に日本の格差の現状に焦点を絞り、分析および考察を行った。中でも飲酒に関する分析を進め、男女差を明らかにした。男性では、低い教育歴の者ほど過度の飲酒、問題飲酒の割合が高い一方、高い所得の者ほど過度の飲酒の割合が高いという逆の関連を示し、格差の複雑さを明らかにした。女性では、本人の教育歴・所得ともに過度の飲酒における格差はみられなかった一方で、本人の教育歴が配偶者よりも高い女性で過度の飲酒のリスクが高いことを示し、女性では本人の社会経済的状態だけでは格差を捉えきれない可能性、家族の社会経済的状態など周囲の社会環境も考慮する必要性を明らかにした。次に食習慣に関する分析も進め、教育歴と食習慣の関連を媒介するメカニズムとして所得・ヘルスリテラシー・社会的サポートに着目し、この関連には所得ではなくヘルスリテラシーが媒介していることを示した。 英国に関しては、ロンドンにてSocial Determinants of Healthのサマースクールを受講するとともに、現地の社会疫学者らと議論を行い、英国における循環器疾患リスクの社会経済的格差に関する研究の現状、今後の方向性等に関する理解を深めた。それらをもとに、日英比較研究の研究計画・仮説構築を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本男性における飲酒の社会経済的格差の現状を英語論文としてまとめ、国際学術誌に受理された。日本女性における飲酒の社会経済的格差の現状に関しては、国内学会、国際学会の両方で、一般演題発表を口演にて行った。 日本人における食習慣の社会経済的格差のメカニズムに関する検討は、国内学会にて一般演題の口演発表を2019年度に予定しているとともに(抄録受理済み)、現在、国際学術誌への投稿準備を進めているところである。 英国の循環器疾患リスクの社会経済的格差に関しては、文献レビューを進めているとともに、用いる予定のデータの概要・調査項目の把握に努めており、日英比較研究の仮説設定・分析方法を構築している段階である。
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今後の研究の推進方策 |
日本における循環器疾患リスクの社会経済的格差に関しては、現在行っている国際学術誌への投稿準備を引き続き進めるとともに、まだ検討を行っていない他の循環器疾患リスク要因、メカニズムの検討も同時に行い、格差の概要把握に努める。現在は横断データの分析にとどまっているが、追跡データも追加して縦断分析を行い、因果関係の解明に努める。 日英比較研究は、英国のデータの利用申請を進め、入手でき次第、現在構築できている仮説の検討を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際学術誌に投稿している論文が間もなく受理されそうであったため、その掲載費用を2018年度分に残していたが、年度内に間に合わず次年度使用額が生じた。2019年4月に受理および掲載がされたため、繰り越した分をその掲載費用に使用する予定である。
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