研究課題/領域番号 |
18K17397
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
村上 慶子 東北大学, 東北メディカル・メガバンク機構, 講師 (40709200)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 社会疫学 / 健康格差 / 社会経済的要因 / 循環器疾患リスク / 国際比較 |
研究実績の概要 |
循環器疾患リスクの社会経済的格差の中でも、教育歴と生活習慣(喫煙、食習慣、飲酒、運動習慣)の関連を中心に検討を進めた。その結果、食習慣との関連では所得よりもヘルスリテラシーの媒介度合いが大きいこと、運動習慣との関連では所得とヘルスリテラシーの媒介度合いが大きいこと、いずれの生活習慣との関連においても社会的サポートの媒介効果は存在するものの小さいことを示した。2020年度は次回調査に向けた検討を行うと研究計画書に記載していたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行が及ぼす社会的・経済的・健康上の影響の重大性を鑑みて、2020年度内にコロナ禍影響調査を実施した。本研究で使用の英国のデータも同様にコロナ禍影響調査を実施しているため、コロナ禍で循環器疾患リスク要因の社会経済的格差がどのように変化したかを日英で比較する準備を進めている。 出生コホート調査データを分析し、生活習慣の社会的要因の検討を進めた。非喫煙妊婦の配偶者における妊娠判明後の喫煙継続および屋内喫煙に関連する社会的要因を検討し、職場で受動喫煙のある配偶者は喫煙継続・屋内喫煙の割合が高く、教育歴の低い配偶者は屋内喫煙の割合が高いこと、妊娠判明後に禁煙した妊婦の配偶者は、喫煙継続の割合が低いものの、継続者の中で屋内喫煙の割合が高いことを明らかにした。妊娠初期に禁煙した女性を対象に産後の喫煙再開に関連する要因を検討し、約4分の1が産後1年の間に喫煙を再開していること、低い教育歴、分娩歴あり、母乳育児なし、産後うつ、家庭で受動喫煙あり、職場で受動喫煙ありの女性で喫煙を再開する割合が高いことを明らかにした。産後1年の女性を対象に危険飲酒に関連する要因を検討し、教育歴が低い、所得が低い女性で危険飲酒の割合が高いことを示し、高い教育歴・高い所得が女性の危険飲酒と関連するという欧米からの報告とは異なる傾向を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生活習慣の社会経済的格差のメカニズムに関する検討は、国際学術誌への投稿準備を進めているところである。コロナ禍における循環器疾患リスク要因の社会経済的格差の変化の検討は、データ解析の準備を進めているところである。 妊婦の配偶者における妊娠判明後の喫煙継続および屋内喫煙に関連する社会的要因を検討した論文、妊娠中に禁煙した女性の産後の喫煙再開に関連する社会的要因を検討した論文は、国際学術誌に受理された。2019年度から取り組んでいる妊娠中の飲酒に関連する社会的要因の検討は、国際学会での一般演題発表を終えた後に英語論文としてまとめ、国際学術誌の査読中である。産後の危険飲酒に関連する社会的要因の検討は英語論文としてまとめ、国際学術誌の査読中である。
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今後の研究の推進方策 |
現在すでに投稿中・執筆中である論文の国際学術誌への受理を目指すとともに、コロナ禍における循環器疾患リスク要因の社会経済的格差の日英比較を迅速に進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度から2020年度に繰り越した費用を国際学会での発表や学外での打ち合わせの旅費に充てる予定であったが、COVID-19の流行により使用する機会が激減した。2020年度はじめに国際学術誌に投稿した論文の査読に時間がかかっていること、2020年度に実施したコロナ禍影響調査の成果創出に2021年度までかかることもあり、2021年度使用が生じた。投稿中・執筆中の論文の英文校正費・掲載費、コロナ禍影響調査のデータ整備および得られる成果の学会発表・論文作成に費用を充てる予定である。
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