研究実績の概要 |
現在日本において非感染性疾患の死亡の危険因子は、喫煙、高血圧に次いで身体活動の低下が第3位である。また運動だけでなく、家事などの生活活動を含めた身体活動全体に着目することへの重要性より、2006年の『運動基準』から2013年『身体活動基準』に名称・内容が改められ、国をあげて身体活動の重要性が叫ばれている。申請者は、20年以上前の1999年に身体活動に注目し、約2,000名を対象に一般住民検診を行った。そして前年度、身体活動量と総死亡は有意な負の関連を示し、身体活動量が多い人は少ない人と比べて、死亡リスクは0.85倍(95% CI:0.78-0.92)であり、また就業中の座位時間と総死亡は有意な正の関連を示し、就業中の座位時間が長い人は短い人と比べて、死亡リスクは1.16倍( 95% CI: 1.05-1.27 )であることを示した。当該年度は、インスリン抵抗性やメタボリック症候群と関連していると報告のある、肝細胞増殖因子(HGF)と身体活動量との関連を調査し、身体活動量がHGFに及ぼす影響を明らかにすることとした。対象者は1999年に一般住民検診を受診し、身体活動量と血清HGF値を測定した1320名のうち、2009年の一般住民検診を受診した、903名。1999年の身体活動量はBaeckeの質問票を用いて評価し、2009年は簡易質問票により評価した。1999年と2009年の身体活動量により4群に分け、血清HGFを比較したところ、身体活動量を維持した、good-good群はgood-poor群と比較して有意に血清HGF値が低かった。年齢と性で補正後も同様の結果であった。メタボリック症候群やインスリン抵抗性発症、さらに癌死亡とも関連している血清HGF値と身体活動量との関連を明らかにし、一般住民において、これらの報告は初である。
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