研究課題
世界初の高度耐性・多剤耐性株が分離された京都・大阪で、近年分離された淋菌約200株のゲノムと薬剤感受性のデータから、主要薬剤に対して耐性を示す菌株の割合をまず明らかにした。特に、第一選択薬であるセフトリアキソンに耐性を示す新たな菌株は見つからないことを確認した。その一方で、セファロスポリン系薬剤に対する感受性の低下を引き起こす主要な因子であるモザイク型penA遺伝子について、通常はそれを有するST7363系統の一部に、組換えによって感受性型のpenA遺伝子に戻っているサブ系統が存在し、維持されていることを明らかにした。また、キノロン系薬剤への耐性は、85%の菌株で見られ、DNAジャイレースサブユニットAの91番目と95番目のリンクしたアミノ酸置換によって、感度99%・特異度100%で判別できることを明らかにした。欧米で第二選択薬として採用されているアジスロマイシンについては、約10%の菌株が耐性を示し、上記の2種類の薬剤に比べてその因子は明瞭でなかった。さらに、セファロスポリン低感受性の二大系統(上記のST7363およびST1901)に注目し、日本の他の地域で過去(1996年以降)に分離された計67株のゲノムと薬剤感受性のデータを追加して解析することで、両者が相異なる進化をしてきたことを明らかにした。具体的には、ST7363系統でモザイク型penA X遺伝子が一度獲得された後、ST1901系統ではモザイク型penA XおよびXXXIV遺伝子が複数回独立に獲得されたことを明らかにした。この論文は、査読の過程で、当初予定していなかったデータおよび解析を加えて、Microbial Genomics誌に出版した。また、国立遺伝学研究所の研究集会、薬剤耐性菌研究会、さらにゲノム微生物学会の奨励賞受賞講演の一部で口頭発表した。
1: 当初の計画以上に進展している
「研究実績の概要」に述べた通り、論文出版と学会・研究会発表の双方で、順調な達成を得ることが出来た。
今年度の達成度を継続していけるよう、今後も日々努力する。
所内の設備に大きな変更が生じる可能性があり、次世代シーケンサー関連の支出を先延ばしにした。次年度使用額は、所内の設備の状況を踏まえて、次世代シーケンサー関連の支出として使用する。
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Microbial Genomics
巻: 4 ページ: 1-13
10.1099/mgen.0.000205