研究課題/領域番号 |
18K17407
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
井平 光 国立研究開発法人国立がん研究センター, 社会と健康研究センター, 特任研究員 (60516590)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 電子化医療情報 / リハビリテーション / 疫学 |
研究実績の概要 |
リハビリテーションが必要な状態から早期の回復を目指すこと(三次予防)は、社会復帰を早めるだけでなく、復帰後の機能低下予防や高齢期における認知症予防、さらには、それに付随した医療費の抑制など、社会全体として求められていることである。本研究では、リハビリテーションによる早期の機能回復に関連する可変的な生活習慣および生活環境を、大規模コホート研究により収集される電子化医療情報を用いて明らかにすることで、三次予防に対する具体的な改善策を提案することを目的とする。 昨年度までの実績として、DPCデータおよびレセプト情報などの電子化医療情報を、自治体および関連病院から収集し、専門的なデータマネジメントの技術を用いながらデータのクリーニングとデータセットの構築を実施した。 現在、構築されたデータセットをもとに、DPCデータから抽出できる情報として、リハビリテーションの実施に関連する情報(リハビリテーションの実施回数、実施単位、実施時間、リハビリテーションの総実施期間、入院からリハビリテーション開始までに日数、入院からリハビリテーション終了までの日数、リハビリテーション実施に関わる医療費、入院全体に)の抽出が可能となった。 今後の予定では、より詳細なリハビリテーション実施状況(疾患別リハビリテーションによる実施状況の違いなど)を検討しながら、対象者の生活習慣や生活環境(体格、家族構成、職業、既往歴、喫煙、飲酒、食習慣、運動習慣、メンタルヘルスなど)を突合させることにより関連解析を実施する予定である。具体的には、整形外科疾患(骨折や変形性関節症など)による運動器リハビリテーションの実施状況と対象者の肥満度(Body Mass Index;BMI)との関連性などを検討し、適リハビリテーションの回復過程に影響を与える生活習慣を探索するとともに、医療費に関わる検討も進めることを予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、構築されたデータセットをもとに、DPCデータから抽出できる情報として、リハビリテーションの実施に関連する情報(リハビリテーションの実施回数、実施単位、実施時間、リハビリテーションの総実施期間、入院からリハビリテーション開始までに日数、入院からリハビリテーション終了までの日数、リハビリテーション実施に関わる医療費、入院全体に)の抽出が可能となった。 リハビリテーションの実施に関連する情報は、DPCデータの診療レセプト情報から抽出した。抽出にあたっては、診療報酬情報提供サービスに収載されている医科診療行為マスター検索によって、区分番号<リハビリテーション>H000-H008の計67件に該当する請求コードを参照し、リハビリテーションの診療行為を抽出した。これらの診療行為情報は、ひとりの対象者につき、日毎に格納されているため、各対象者の入院ごとのリハビリテーション実施状況を集約しなおす必要があり、そのための再構築作業が必要だった。また、リハビリテーションの関する情報は診療報酬レセプトからの抽出を基本としているため、傷病名、入院履歴および日常生活活動などの情報と関連付けるには、これらの情報が収載されている退院サマリ(様式1)の情報と突合させる必要があった。 なお、リハビリテーション実施状況の把握の限界点として、基本的動作能力の回復等を目的とする理学療法や、応用的動作能力、社会的適応能力の回復等を目的とした作業療法、および言語聴覚能力の回復等を目的とした言語聴覚療法など、治療法別の実施状況をDPCデータやレセプト情報から明らかにすることは、今後の課題と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の予定では、疾患別リハビリテーションによる実施状況の違いや、傷病名と組み合わせることによるリハビリテーションの治療法別(理学療法、作業療法、言語療法)の把握可能性など、より詳細なリハビリテーション実施状況を検討しながら、対象者の生活習慣や生活環境(体格、家族構成、職業、既往歴、喫煙、飲酒、食習慣、運動習慣、メンタルヘルスなど)を突合させることにより関連解析を実施する予定である。具体的には、整形外科疾患(骨折や変形性関節症など)による運動器リハビリテーションの実施状況と対象者の肥満度(Body Mass Index;BMI)との関連性を検討し、適正体重を維持することによって、リハビリテーションの回復過程にどのような影響があるのか等を検討することを予定している。また、関連解析によって得られた知見から、リハビリテーションの回復過程に関連する生活習慣が、最終的にどの程度の医療資源投入量に影響を及ぼしているかを検証し、個人・社会レベルで三次予防の改善策を講じるための知見を得ることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大の影響に伴い、予定していた研究打ち合わせや成果報告の旅費などの使用を次年度に繰り越した。また、データ解析等に関わる人件費の支出は、次年度に繰り越す予定に変更した。
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