研究課題/領域番号 |
18K17410
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研究機関 | 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所 |
研究代表者 |
山本 香織 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 微生物部, 主任研究員 (70649011)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 結核 / 地区類型 / 都市部 / 地域差 / 感染伝播 |
研究実績の概要 |
結核は三大感染症の一つであり、2018年に全世界で1,000万人が罹患している。わが国では、結核罹患率(2018年時点12.3)を2020年までに10以下の低蔓延状態にするという目標が宣言されている。人口が多い大都市では結核が拡がりやすい状況にあり、大阪市は2018年の結核罹患率が29.3と全国で最も高い。大阪市24区の2018年の結核罹患率は、最も低い淀川区の12.7から最も高い西成区の134.8まで大きな開きがあり、都市内部においても特定の地域に結核が偏在している状況がうかがえる。この結核患者発生の地域間格差の要因を追究するために、地域の居住者の社会経済的な指標により分類した社会地区類型を構築し、類型間の結核発生状況の地域差を明らかにするとともに、患者の地域的特性について検討した。 大阪市は15の社会地区類型に分類され、結核の発生状況は類型間で大きな開きが認められた。新規登録の結核患者が多かった類型は、あいりん地域を含み、社会経済的に貧困で高齢者が多い類型および単身の若者でサービス業従事者が多い類型であった。一方、同患者数が少ない類型は、裕福な高齢者で長期在住者が多い類型およびホワイトカラー通勤者の住宅地が多い類型であった。結核患者が多い類型群の患者を特徴づける属性としては、男性、年齢が40から89歳、再治療、および健康診断による発見があげられた。一方、同患者数が低い類型群の患者を特徴づける有意な患者特性は、発見の遅れだった。 大阪市の結核発生状況は、社会経済的状況が異なる地域で差が認められ、地域によって患者の特徴が異なることが明らかとなった。大阪市の結核患者数減少を目指すにあたっては、地区の結核患者特性に応じた多様な結核対策が有効であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
収集した菌株の解析でやや遅れが生じているが、対象株の収集および選定は終えており、遺伝子型別も対象およそ2500株のうち8割は終えている。
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今後の研究の推進方策 |
社会地区類型によって分類された類型地区内におけるVNTRクラスターの存在および疫学的関連から地域内感染伝播のリスクを評価する。併せて、検出される遺伝系統を類型地区ごとに比較し、最近の感染による発病者が多い地域や、高齢化とともに発病した過去の再燃例の多い地域を個別に検出し、クロス集計表等の統計的手法を用いて各類型地区における結核の疫学的特徴について検討し、都市部内での結核感染伝播に関する地域差の解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
遺伝子型別の実施に遅れが生じたことにより、次年度への研究期間延長を申請し、繰り越した使用額は主に遺伝子型別と成果発表に使用する。
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