本研究の目的は、事故による子どもの頭部外傷を予防するため、また法医鑑定において子どもの頭部外傷を正確に評価できるようにするために、①子どもの頭蓋骨の強度及び厚さを部位毎に評価し、比較することで、骨折しやすい部位があるかを明らかにすること、②年齢との相関関係を調査し、頭蓋骨の生理的成長について明らかにすること、③男女別に分けて調査し、子どもの頭蓋骨の性差について明らかにすることである。人間の頭蓋骨の試料は法医学関連施設以外では採取することが難しい。また、試料の強度を求めるには工学系の機器が必要であり、データ分析には工学の専門的知識が必要である。よって法医学と工学という分野の異なる機関、施設あるいは企業が協力をしなければ、本研究のような研究をすることはできず、実際本研究は世界的に見ても類を見ないものであり、学術的独自性があると言える。また、生理的成長や性差を踏まえた上で、子どもの頭蓋骨の強度や厚さを調査した報告はこれまでにほとんどなく、また過去の報告では研究対象の数が少なく、年齢に偏りがあり、各年齢における強度を求めた報告はこれまでにない。さらに日本人の子どもを対象とした研究はこれまでにない。よって、本研究は学術的創造性があると言える。 平成31年度に採取できた試料の数は予想よりも少なかった。子どもの場合は生理的成長があるため、症例数を多くして年齢別に区分することが評価する上で非常に重要である。令和2年度も試料収集を継続し、十分な症例数が集まった後に結果を分析し、学会発表及び論文執筆をしていく予定である。
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