研究課題
本研究の目的は、組織透明化/3次元イメーイング技術「CUBIC」によるミクロ的手法と、汎用性のある死後CT及び死後MRIによるマクロ的手法を組み合わせ、皮質動脈を網羅的に検索することで、皮質動脈破綻による硬膜下血腫(acute spontaneous subdural hematoma: ASSDH)の解剖例で肉眼的に認識困難な破綻血管を確実に同定できる実行可能な診断法を確立することであるが、当該年度は疑い例を含め新たに4例を本研究の解析対象に加えることができ、合計7例の解析を行うことができた。新規症例のうち3例で死後CT(死後造影CTを含む)を行い、さらに1例ではMRI撮影施行できた。また前年度から引き続き解析を行っている3例では「CUBIC」による解析までが終了し、1例では免疫染色の有用性や欠点の検証を行った。さらに2例では病理学的検索による破綻血管の詳細な解析まで終了した。前年度までの解析によって「CUBIC」法が病理学的検索と同等の微視的精度で破綻血管を同定することが可能であることが実証されていたが、当該年度においては「CUBIC」法と病理学的検索を対比することで、「CUBIC」の利点と欠点が明らかになってきた。「CUBIC」では病理組織学的検索と同等の精度で、なおかつ病理組織学的検索では不可能な非破壊的3次元的解析が可能となる一方、出血部位の透明性の低下や免疫染色に伴う組織脆弱性の問題が生じることがわかった。次年度においてはこの欠点を補う解析方法の検討を行い、本研究の目的であるASSDHの汎用性のある診断法の確立を目指す。
2: おおむね順調に進展している
解析対象を20例/4年と予定しており、2年目終了時点で合計10例の解析が可能であった。死後造影CT検査、死後MRI検査、組織透明化/3次元イメージング技術「CUBIC」、病理組織学的検査を順次施行しており(症例によっては時間的制約により一部検査が施行できなかったが)、解析は順調に進行中である。
ASSDHの解剖例に対する死後造影CT検査、死後MRI検査、組織透明化/3次元イメーイング技術「CUBIC」、病理組織学的検査を併用した破綻血管の検索について、初年度と同様に当該年度の結果からもその有用性が示唆されたため、今後も同様の検索を計測していき、ASSDHの破綻血管を確実に同定できる汎用性のある診断法の確立を行っていく。さらに当該年度明らかになった出血部位の透明性の低下や免疫染色に伴う組織脆弱性といった「CUBIC」法の欠点を克服するため、「CUBIC」法の改良の検討を行っていく。
当該年度の研究は概ね予定通り進捗し、当該年度予定支出額の86%を支出したが、一部の症例で研究協力施設での死後MRIが未施行となっており、次年度に施行し使用する予定である。
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Legal Medicine
巻: 38 ページ: 77-82
10.1016/j.legalmed.2019.04.005