本研究の目的は、組織透明化/3次元イメーイング技術「CUBIC」によるミクロ的手法と、汎用性のある死後CT及び死後MRIによるマクロ的手法を組み合わせ、皮質動脈を網羅的に検索することで、皮質動脈破綻による硬膜下血腫の解剖例で肉眼的に認識困難な破綻血管を確実に同定できる実行可能な診断法を確立することである。まず研究4年目に出血源として皮質動脈の破裂を検出し、破裂部位の詳細な病理組織学的検索を2例で実行し症例報告を行った。硬膜下血腫の解剖において出血源として皮質動脈の破裂を検出し、破裂部位の詳細な病理組織学的検索を行った症例は1950年に6例報告されて以来の71年ぶりであった。研究5年目には「CUBIC」法では病理組織学的検索と同等の精度で、なおかつ病理組織学的検索では不可能な非破壊的3次元的形態解析が可能となるといった利点がある一方で、本法による解析を行うには予め別の方法によって出血部位の特定が必要となることや、出血部位の透明性の低下が「CUBIC」による皮質動脈破綻の検出を妨げるといった限界を有することについて報告を行った。さらに研究6年目(最終年度)には皮質動脈破裂による急性硬膜下血腫において頭部死後血管造影CTは全例ではないものの半数以上の症例/破裂部位に対して、開頭術による死後の血管損傷が生じる以前に、皮質動脈の破裂部位を指摘することが可能であり、さらにその後の開頭術の部位を適切に設定できることから、頭部死後血管造影CTは皮質動脈破裂による急性硬膜下血腫に対して肉眼的に認識困難な皮質動脈破裂部位の同定を確実に行うための方法の一つとして有用な方法であることについて報告を行った。最終年度には症例が6例追加され、本研究課題終了時点において合計23症例を集積することができた。今後は組織透明化法以外で非破壊的3次元的形態解析を行う方法について研究を継続する予定である。
|