研究実績の概要 |
解熱鎮痛剤として汎用されているアセトアミノフェン(APAP)は,肝臓特異的に障害を起こすことが知られており,容易に入手できることから自殺や偶発的な事故など,法医実務においてしばしば中毒事例と遭遇する.本研究では,炎症の制御あるいは増幅に関わる樹状細胞の中でも,特に細胞障害性T細胞を誘導する活性が強いXCR1陽性樹状細胞(XCR1+DC)に注目し,マウスを用いた実験によりAPAP肝障害におけるXCR1+DCの態様,マクロファージ(クッパー細胞)の動態,APAP代謝動態,炎症性サイトカインの発現動態との関連性を解析することを目的として実験を行った. マウスはXCR1遺伝子欠損およびXCL1遺伝子欠損マウスと,コントロールとして野生型(C57BL/6)マウスを使用し,APAPを600 mg/kg投与後,経時的(10,24時間)に各マウスから採取した血液を血清分離し,血清中逸脱酵素(ALT, AST)の測定を行い,肝障害の程度を生化学的に解析した.その結果,野生型マウスと比較してXCR1遺伝子欠損マウスでALT,AST上昇の増加が見られた.さらに投与後10時間及び24時間に採取した肝臓組織から作成したパラフィン包埋切片をHE染色し,形態学的変化を観察したところ,野生型マウスと比較してXCR1遺伝子欠損マウスで,肝障害の増悪が見られたことから,APAP肝障害におけるXCL1-XCR1シグナルの関与が示唆された. 野生型マウスにAPAPを投与後,経時的(10,24時間)に採取した肝組織により,total RNAを抽出し,逆転写によりcDNAを合成,real time RT-PCRを行い,各時間におけるXCL1およびXCR1のmRNAを定量した結果,XCL1は24時間まで増加していた.
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