研究課題/領域番号 |
18K17421
|
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
勝山 碧 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 助教 (90803700)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | アルコール代謝 / 腎病理 / ADH1 / ADH3 |
研究実績の概要 |
【背景】本研究は,アルコール(Alc)代謝の鍵酵素であるAlcohol Dehydrogenase Class I (ADH1)が肝の次に腎に多く分布していること,およびADH3がAlcにより腎障害を引き起こしている可能性が示唆されたことに着目し,腎でのAlcの影響について検討した. 【方法】ADH1ノックアウト(KO)マウスに水(C群)あるいは10%アルコール(E群)を1か月摂取させ,尿・血清・腎を回収した.尿及び血清からアルブミン,総蛋白,テストステロン(tes)を測定した.また,腎は光顕および電子顕微鏡により観察を行い,昨年度得たADH3KOマウス腎での結果と照らし合わせ,比較検討した.更に,免疫染色により腎でのADH1およびADH Class III (ADH3)の局在を検討した. 【結果】ADH1KOマウスはADH3KOマウスと同じく,腎障害を裏付ける生理学的所見は得られなかった.しかし,C・E群いずれも糸球体内の好中球浸潤を認め,E群では更に糸球体凝縮像,尿細管内の円柱およびWTマウスE群でも見られた糸球体foot process effacementを認めた.糸球体ボーマン嚢上皮細胞の立方化(C-PECs)はADH3KOと同様,C・E群で認めた.tesに群間の有意差は見られなかった.腎でのADH1・ADH3の分布は,ADH1は遠位尿細管に局在しているのに対し,ADH3は近位尿細管および遠位尿細管に局在していることが明らかになった. 【結論】昨年度までに得た結果と比較し,Alc摂取による腎障害はWT>ADH1KO>ADH3KOマウスの順で悪化することが明らかとなった.ADH3存在下でのAlc代謝が腎障害を増悪させることが示唆された.C-PECsに関しては,Alc摂取もしくはADH1,ADH3いずれかが非存在であることがtes代謝を阻害し,引き起こす可能性が示唆された.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アルコールが及ぼす腎障害について,当初予定していたWT,ADH1KO,ADH3KOマウスのすべてのマウス種での実験を行った.そのため,「おおむね順調に進展している」評価とした.
|
今後の研究の推進方策 |
8週齢雄WT,ADH1KO,ADH3KOマウスのC・E群に対して下記を実施する. 1)腎尿細管障害マーカー遺伝子の発現変動を観察するために,腎からRNeasy Mini kit (GIAGEN)を用いてmRNAを抽出し,Syber green法を用いてRT-PCRにより測定する. 2)各マウスのアルコール代謝能測定のため,5%アルコールを投与し(ADH1KOマウスは10%アルコールでは1か月以内に死亡するが,5%アルコール投与では1年以上生存するため),経時的に尾静脈採血を行い,ガスクロマトグラフィーを用いてアルコール代謝速度を算出する.
|
次年度使用額が生じた理由 |
所属研究機関異動に伴い実験計画が当初よりずれたため,次年度使用額が生じた.論文投稿予定が数件あり,英文校閲費および論文投稿料に使用する.
|