研究課題/領域番号 |
18K17423
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研究機関 | 科学警察研究所 |
研究代表者 |
綿引 晴彦 科学警察研究所, 附属鑑定所, 研究員 (00760901)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | Y染色体STR / Y染色体ハプログループ |
研究実績の概要 |
前年度までに、法遺伝学において重要なY-STRの一つであるDYF387S1について、ハプログループ間でコピー数の分布が異なることを示す結果が得られていた。本年度は、ハプログループ間で違いが生じた原因を調べるため、パリンドローム領域におけるparalogous sequence variantの塩基配列解析等を実施した。その結果、各ハプログループの共通祖先においてそれぞれ異なる形でコピー数変化が起こり、それによって現在のコピー数の分布の違いがもたらされた可能性が示唆された。一部のハプログループでは、パリンドローム領域の相同配列間でconversionが生じた可能性が示唆された。得られたデータに基づいて、コピー数変化やconversionが生じたタイミングを、ハプログループの系統樹において推定することができた。日本人集団と共通のハプログループが存在する他国の集団においても、本研究で推定されたコピー数変化等がDYF387S1の多型性に影響している可能性が考えられる。これらの研究成果についてまとめた論文を国際学術誌に投稿した。 いくつかのハプログループについては、さらなる細分化を実施した。その結果、Y-STRのマイクロバリアント及びコピー数とハプログループに関して、従来よりも詳細に対応関係の存在について示すことができた。他国の集団のデータを参照したところ、本研究で用いた試料とハプログループ及びマイクロバリアントが同一の試料が確認され、それらは共通の祖先に由来する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ハプログループとDYF387S1の関係については、当初の計画以上の成果が得られ、研究内容を論文にまとめて国際学術誌に投稿することができた。ハプログループの分析については、本年度新たに発表された次世代シーケンサーによる手法を一部用いることにしたが、試薬の調達が間に合わなかったことによりやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は海外の研究グループによって次世代シーケンサーを用いたY染色体ハプログループの分析手法が発表された。同手法は従来法より効率的にハプログループを調べることができるため、当初の計画には無かったが、同手法を導入して本研究を遂行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画には無かった次世代シーケンサーを用いた実験手法に必要な試薬を購入するため、次年度配分額と合わせて使用することにした。
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