本研究の目的は、自閉スペクトラム症(以下、ASD)の発達特性をもつ看護大学生に対し、大学としてどのような学生支援・教育をしているのか、その上で、どのような合理的配慮がなされているのか、現状を明らかにし、ASDの発達特性をもつ看護大学生に対する大学での支援体制づくり・システム化への示唆を得ることである。 令和4年度は、令和2年度に行ったWEB調査(看護系大学における発達障害を有する看護大学生への合理的配慮に関する体制整備の現状)結果とこれまでに行ったインタビュー調査の結果も含め、ASDの発達特性を有する看護大学生への支援について、第37回日本ストレス学会学術総会のシンポジウムにて発表した内容を再編し、学会誌(ストレス科学)に投稿し、受理・掲載された。 概要:WEB調査により、看護系大学で行われている発達障害を有する学生に対する具体的な支援として、「伝達方法の工夫」「録音・録画・ノートテイク」「個別面談」「資料、教材の工夫」「感覚過敏への対応」「試験への配慮」「関係機関への調整」「履修計画への支援」が挙げられ、講義への体制整備が進んでいるものの、グループワークや看護技術演習に対応する支援体制が十分ではないことがうかがえた。WEB調査とインタビュー調査結果から、ASDの特性を有する看護大学生への支援では、1)大学としての支援体制(合理的配慮・教育的配慮の整備,相談窓口の設定)をととのえること、2)発達特性を有する大学生に関する教職員の正しい理解を得る機会(FD・情報交換会など)を設定すること、3)発達特性を有する学生との対話を行い、その中で配慮できること・できないことを明確化すること、4)お互いに安心できる学修環境を整備すること、5)支援にあたる教職員も一人で抱えず、他者と対話(連絡・報告・相談)をすることが重要であることを明らかにした。
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