研究課題/領域番号 |
18K17441
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
伊藤 綾子 東京医科大学, 医学部, 准教授 (10410200)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | シミュレーション教育 / 脳血流量 / 視線動向 |
研究実績の概要 |
本研究は、シミュレーション教育の効果や影響を、生体データを収集・分析することにより可視化し、客観的に検証することを目的としている。平成30年度は、実験課題の詳細を検討し、予備実験の実施を終え、データ収集を開始した。収集を開始した客観的な生体データは2種類である。一つは、視線動向計測装置による学習者の視線動向測定値からの学習対象の捉え方の測定データである。もう一つは、脳血流計測装置によりシミュレーション学習時の脳活動の測定値である。 看護場面の観察、看護援助、看護援助の振り返りのディスカッションを行うという3つの場面について、視線動向と脳血流量の変化による脳活動の測定を実施した。 データ収集の途中ではあるが、現在のところ、脳血流量は、看護場面の観察を行っている場面と比較し、看護援助を行っている場面と看護援助の振り返りを行っている場面では脳血流量の増加がみられるという結果が得られている。つまり、看護援助の振り返りを行っている場面は、体を動かし、患者に声をかけながら看護援助を行っている場面と同様の脳血流量の増加があるということが明らかになってきている。シミュレーション教育において、看護援助を行う場面だけではなく、振り返りを行う学習が脳血流量の増加を同程度にもたらしている可能性があるということがこれまでの成果として得られたと考える。 今後は、視線動向のデータの分析を進め、看護場面を観察することや、観察しながら援助を行うことで、視線の動向に変化が生じるか、脳血流量の変化との関連性についても分析を行っていく。また、主観的データの収集も行っているため、それらが既存の研究結果を反映するものであるのかも明らかにし、生体データとの関連性についても検討を行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は、当初の計画通り、実験課題設定、予備実験の実施、実験データの収集を開始できた。しかし、被験者が実験に参加できる時期が、実験の条件であるシミュレーション教育を経験しているということに該当することや、定期試験や臨地実習の時期と重ならない時期など限定される。令和元年度は、予定していた40名の対象者のうち約半数の対象者のデータ収集を必要とするため、7月から9月でデータ収集を終えられるよう調整を行う。 収集しているデータの一部で、海外での成果発表の機会を得ることもできたため、研究の計画は、概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
視線動向の測定値の分析には、時間を要するため、データ収集中から分析を開始する。視線動向データの分析の方法には、一定の規則を研究者が設ける必要があるため、その規則や焦点を当てるデータについて検証し、実験補助者の協力を得て分析が進むようにしていく。 被験者の確保については、学生を対象としているため、学生の長期休暇を活用できるよう計画を立てて進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度には、データ分析用のコンピューターを購入予定であったが、設備備品費で支出がおさまらない可能性があり、翌年度に購入を延期したために次年度使用額が生じた。令和元年度にはデータの分析を開始するためにコンピューターを購入する。また、予定通り、データ解析のソフトウエアも購入し、国際学会への成果発表のための旅費も計上する予定である。
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