研究課題/領域番号 |
18K17443
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研究機関 | 関東学院大学 |
研究代表者 |
渡辺 真弓 関東学院大学, 看護学部, 専任講師 (60801537)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 長時間労働 / 医療施設 / 組織的学習 / 創造性 / 標準化 |
研究実績の概要 |
【調査の概要】医療施設における組織的学習尺度(LOS27)の日本語版尺度の開発のために、今年度は翻訳版の最終調整(医療従事者10人に対して読みやすさを尋ねるための調査)を行った。次に、この最終版を用いて尺度開発のためのインターネット調査を行った。 【結果】最終調整のためのパイロットテストにおいては、文章の分かりづらさや難しすぎる漢字等の指摘があり、適宜修正を加えた。最終版尺度のインターネット調査は、病院に勤務する正職員のフルタイム勤務看護師を対象とした。衛生行政報告を用いて、全国の病院に勤務する看護師の年代と性別の構成と同一の分布比となるように年代と性別を調整した上で調査した。 525人(女性478人=91%、男性47人=9%)が回答した。平均年齢は39.4歳、平均経験年数は15.1年であった。最終学歴は専門学校卒が最も多く(62.9%)であり、大学卒以上は約27%であった。既婚者の割合はほぼ半数であった。夜勤については、2交代制が62.7%と多く、3交代制は21.7%であった。夜勤を行っていない者は8%であった。 LOS27尺度は原版は7つの下位項目を持つが、探索的因子分析の結果、各下位項目は概ね原版通りに収束し、因子負荷量はほとんどの項目で0.6以上であった。下位尺度のクロンバックαは、心理的安全0.81、リーダーシップ0.92、実験0.86、トレーニング0.80、知識0.85、時間0.78、成果0.83と良好であった。 【意義・重要性】 変化が激しく、社会的な状況に大きく左右される医療施設において、組織的に知識の蓄積を行い、職員が学び続ける意欲を持つことは非常に重要である。これまで、日本の医療施設において組織的学習を包括的に計測できる尺度はほとんど存在しなかったが、本調査によってその計測、及び組織的学習の促進のための方策策定が可能となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本来であれば、昨年度までに尺度開発のための調査を終了し、病院への本調査を行う予定であった。しかし、新型コロナウィルス対策のための緊急事態宣言により自宅にて幼い子供の面倒を見ながら仕事をする必要があったこと、大学の仕事においてオンライン授業対策を行う必要があったことから、研究の時間を捻出することが非常に困難となった。このため、今年度は尺度開発調査のみを行い、研究期間延長を申請して来年度に病院への本調査を行うこととした。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、尺度の妥当性・信頼性を綿密に検討した上で、LOS27日本語版尺度の決定を行う。その上で、病院に勤務する看護師に対して、労働時間や労働負荷と組織的学習の度合い、創造性や標準化の程度、そしてケアの質を問う本調査を行う。この調査結果を元に、どのように病棟や部署において望ましい労働環境を構築するのかの方策を確定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍による緊急事態宣言のため、研究遂行時間、及び医療機関の研究受け入れ状況が大幅に変更したため。今年度は、この未使用額を尺度の信頼性・妥当性確認のための事前調査、及び病院における本調査のための費用とする予定である。
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