研究の目的:最終年度は主にデータ分析と結果の公表を行うことを目的として活動を行った。コロナ下での追実験の実施は困難であり、当初予定していた実験の全てを実施することは出来なかった。しかし、研究目的としていた高度実践看護師のもつ実践技術の一つである聴診技術を音響解析を通じて評価することで、心音を用いた診断において正常心音との周波数的な音の違いだけでなく、事前に異常を意識した音の探索が聴診技術には重要であることを示す結果が得られた。本実験を通じて得られた結果については、最終年度に論文投稿し掲載待ちとなっている。 本申請研究を通じて、高度実践看護師などの高度な知識を有する看護師は、聴診技術を通じて疾患を予測する際に、正常音とはことなる異常音の診断基点となる音の識別の際に、機械的にも判別が可能な正常音と異常音とで明確に異なる音の違いを拾うだけではなく、音から疾患を意識し診断基点となる音を探しに行く思考過程が判別に影響を与えることを明らかとした。音を用いた識別において、実際の臨床場面では生活音などの環境音や患者個々での音の違いなど個人差があることから、教科書に記載されているような明確な異常音を認識することは困難であると考える。このことから、高度実践技術を有する看護師は、聴診時における音を用いた診断において、患者情報から異常を認知し意識的に音を探すことで複雑な問題を解決していると考える。この知見は、今後の看護領域において聴診技術を習得させる教育を実施する上で重要な意味を持つ。これら、実践技術を量的に評価することは熟練看護師の明確な技量を評価する上で重要であり、看護業務と能力を正しく評価することが可能となることで看護管理として人材を管理していくうえで重要と考える。
|