褥瘡の創閉鎖部における再発を防ぐため、創閉鎖部のリモデリングを経時的に観察する必要がある。リモデリングの評価方法としては、組織を採取して観察する組織学的手法が望ましい。しかし組織学的手法は侵襲を伴うため、リモデリングを経時的に評価する方法としては不適切と言える。そこで本研究では、第一段階として実験動物で創閉鎖部のリモデリングの過程を組織学的に明らかにし、動物実験の結果をもとにリモデリングの過程を評価可能な項目(バイオマーカー)を決定する。その後、第二段階では非侵襲的に蛋白を吸着し分析可能なスキンブロッティングを用いて当該バイオマーカーを経時的に測定する臨床調査を行うこととした。 今年度は、初年度から継続している第一段階のリモデリング過程を評価可能なバイオマーカーの探索ならびに第二段階の臨床調査を開始するにあたっての準備を進めた。バイオマーカーの探索においては、初年度に開発した創傷瘢痕モデルラットを用いて創作製後7、14、21、28日目の瘢痕組織を採取し、IV型コラーゲン、XVII型コラーゲンなどの表皮基底膜構成因子の発現動態を観察し、リモデリングの進行に伴い発現が変動するマーカーの候補を挙げることができた。その結果を基に、「褥瘡の創閉鎖部におけるリモデリング過程の経時的評価」として、療養病棟を有する一般病院で前向き調査を行う計画を立案した。共同研究施設(大学)の医学倫理審査委員会の承認後、プレ調査として調査施設の褥瘡回診にて褥瘡治癒と判断した入院患者をリクルートし、データ収集を開始した。しかし、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の院内感染予防のため、調査施設への立ち入りを中止することとなった。そのため、調査は一時中断となったが、同テーマの研究には今後も継続して取り組む予定である。
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