本研究の目的は、看護基礎教育により養成される看護実践能力および社会的スキルが、どのように新卒看護職の職業的アイデンティティ確立に結びついているのかを明らかにし、それを踏まえて、職業的アイデンティティを高める教育の工夫を提言することである。具体的には、看護実践能力と社会的スキルのどの要素がアイデンティティ確立に寄与しているかを新卒看護職への質問紙調査によって明らかにし、看護基礎教育における教育の工夫を検討する。 平成30年度は職業的アイデンティティに関連する新卒時の看護実践能力および社会的スキルの要素を特定するために、質問紙調査を行った。全国の病床数200床以上の病院に新卒として入職後1ヶ月以内の看護職を対象とし、研究協力の同意が得られた人に対し、2回の縦断的質問紙調査を行った。1回目の調査は新卒看護職者の入職直後に、2回目の調査は7月(新卒看護職者の入職後3か月)に実施した。病院の看護部担当者を通じて質問紙一式を対象者に配布してもらい、回収は対象者から直接研究者への郵送により行った。調査内容は、属性、看護実践能力、社会的スキル、職業的アイデンティティ等である。 令和元年度は解析を行った。その結果、入職後3か月時の職業的アイデンティティと入職時の看護実践能力および社会的スキルには弱い正の相関があったが、強くは関連していないことが明らかになった。この結果から、看護実践能力や社会的スキルの他に、職業的アイデンティティとより関連の強い要素を見出し、それらをどのようにすれば身につけられるか検討し、看護基礎教育の中に活かすことで、新卒看護職が職業的アイデンティティを高めることに繋げたいと考えている。
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