最終年度は、海外の質的研究者へ本研究の意義を伝え、研究の発展の示唆を得るためのディスカッションを行うため、現象学や質的方法による人間科学研究を学際的に議論する学会で、学問領域は哲学、心理、教育、看護、医療、保育、ソーシャルワーク、芸術等、理論から実践まで多様でその垣根を越えて議論・交流できる40th International Human Science Research Conferenceにて、口頭にて本研究の発表を実施した。研究協力者は、本研究目的に沿った内容が十分に語られた入院経験のある研究協力者6名(男性 3名、女性3名)に協力頂いた。研究協力者の入院日数は、平均40.8日、平均年齢は、56歳であった。抽出されたテーマは、1)体感や応答を通した触れるケア2)触れるケアの気持ちよさと安心 3)傍にいることを通した意欲 4)触れることを通した協働であった。 結果より、「触れる」看護ケアは、配慮がなく看護師に信頼を寄せられない状況や、気持ちよさが得られない、不快な状況は、ケアとして成り立たず、「一人一人」に向き合うようなケアやどの看護師でも信頼して同じようなケアが受けられる「安心感」が大切であることが導き出された。加えて、「触れる」ことが看護ケアとして成り立つための構造的な示唆が得られた。それは、看護師が「触れる」ことで伴われる患者の体感は、初次元的な層の感覚を素地としながら、それがある意味合いを帯びたものとして、患者に「すんなり」と受け入れられるような認識の層へとつながることで、その行為自体が看護ケアとして成り立つと考えられたことであり、逆説的に考えると、患者の状況や「触れられた」感覚次第では「触れられる」ことが、患者にとって「すんなり」と受け入れられる経験でなければ、ケアとしての意味はなさないというケアの根源を示唆したものとなった。
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