研究実績の概要 |
本研究の目的は、折れ耳や埋没耳などの先天性耳介奇形を矯正するための安全で安心な耳介矯正装具を開発することである。今年度は既に耳介部の矯正に用いられている可塑性樹脂を使用し、本来の耳介を曲げ、耳介に及ぼす影響を基礎的に検証した。ウサギ4羽を使用し、片耳を実験群、もう片耳を対照群とした。実験群はウサギ耳介部を折り曲げ可塑性樹脂で固定し、対照群は固定しなかった。固定3か月後に弯曲させた耳介組織を採取し、同部位に対照的な部位を対照群から採取した。HE染色にて軟骨厚、皮下組織厚、表皮層厚を測定し、免疫染色(CD31)により血管数を計測して比較検討した。 結果:湾曲した部位の軟骨の厚さは増大しており、ランダムに6カ所の軟骨厚を測定すると、実験群:550.5±266.8μm、対照群:142.8±8.1μm(p=0.004)であった。耳介皮膚の表皮厚は実験群が有意に肥厚しており、それは湾曲した耳介の凸面や凹面でも同様であった(凸面:p=0.003, 凹面:p<0.001) 。また、弯曲された耳介の皮下組織は炎症細胞の浸潤が認められ、皮下組織厚は実験群が有意に肥厚していた(凸面:p<0.001, 凹面:p=0.002)。また同様に血管数も実験群が有意に増加していた(凸面:p<0.001, 凹面:p<0.001)。 可塑性樹脂で耳介部を折り曲げ固定することにより、対照群と比較し実験群の耳介軟骨・表皮・皮膚皮下組織が肥厚し、血管増生が認められた。矯正装具により耳介軟骨を矯正する場合も同様の変化が生じることが考えられた。
|