研究課題/領域番号 |
18K17479
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
奥山 絢子 国立研究開発法人国立がん研究センター, がん対策情報センター, 室長 (90452432)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 看護の質 / モニタリング / 専門看護師 / 認定看護師 / 化学療法 / 制吐療法 |
研究実績の概要 |
研究3年目では、全国がん登録2017年罹患数と日本看護協会が公表している専門看護師・認定看護師リストを用いて、各都道府県におけるがん患者当たりの専門看護師・認定看護師配置状況について検討を行った。結果、専門・認定看護師数は、都道府県によってばらつきがあり、特にがん化学療法認定看護師と乳がん認定看護師は患者当たりの都道府県間の差が大きいことがわかった。また、院内がん登録と診療情報(DPC導入の影響評価にかかる調査)をリンケージさせたデータを用い、がん別に化学療法時の催吐性リスク分布と制吐療法の実施割合について検討を行った。結果、食道や乳癌は高度催吐性リスクの高い薬剤が使用される傾向が高いことが分かった。また、食道や乳癌の高度催吐性リスク薬時にガイドラインで推奨されている制吐療法の実施割合は、90%を超えており、実際の嘔吐割合を推定すると約35%程度であることが分かった。一方で悪性リンパ腫ではガイドラインの推奨される制吐療法の実施割合が17%程度と低くなっていた。ガイドラインで推奨される制吐療法を実施することで、患者の悪心はかなり改善すると言われており、看護職として、制吐薬適正使用ガイドラインを踏まえた適切な患者ケアを行う重要性が示唆された。現在、専門看護師と化学療法時の制吐療法との関連について分析を進めている。また、昨年度実施した看護の質モニタリングの質指標に関する文献調査の結果については、International Forum on Quality & Safety(デンマークオンライン開催)の学会にて発表をした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
看護の質モニタリングに関して重要な要素をまとめ論文投稿をしたが、雑誌からの回答が新型コロナウイルスの感染症流行もあって通常より時間を要し、また査読者からの意見を踏まえた修正と再投稿時間を要している。しかし、その間に全国がん登録罹患が公開されたことを踏まえ、まず全体としての患者当たりの専門・認定看護師数の配置に都道府県間の差がないかを検討を行った。また研究課題であるがん専門・認定看護師の配置と化学療法時の催吐性リスク別のガイドラインに遵守率との関連を検討するために、まずはがん別に化学療法時の催吐性リスク分布を調べるとともに、がん別の制吐療法の実施率の差異について検討を行った。この結果、がんによって同じ催吐性リスクであってもガイドラインに基づいた制吐療法の実施率には差があることが分かった。今後、この結果を踏まえ、専門・認定看護師の配置と制吐療法の実施率との関連について検討を進める。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染症の流行があり、投稿していた雑誌から査読結果までに時間を要すると言われている。このため、当初論文採択後に、看護管理者らへの質問紙調査を予定していたが、現在の結果を踏まえ、管理者らへ行う質問内容を整理し、2021年度はアンケート調査の実施を進めていきたい。また、院内がん登録と診療データを用いた専門看護師と化学療法時の制吐療法実施率については、基礎的な分析(専門・認定看護師の配置数とがんによる制吐療法実施率の差異)を進めることができたため、これを踏まえて、専門・認定看護師の配置と制吐療法実施率との関連について更に分析を進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症流行に伴い、国際学会がオンライン開催へと変更となり、学会発表に関する旅費等の関連費用が生じなかったことが大きく影響している。現時点は明確になっていない点も多いが、次年度国際学会によっては秋以降の現地開催も予定されており、こうした状況を鑑みで消費する予定である。
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