研究課題/領域番号 |
18K17480
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
青山 真帆 東北大学, 医学系研究科, 助教 (30781786)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | がん / 終末期 / 緩和ケア / 遺族ケア / 社会経済的地位 / QOL |
研究実績の概要 |
社会経済的地位の違いによる健康格差は医療・公衆衛生学分野で広く明らかになっているものの、緩和ケア/終末期ケアにおけるアウトカムである終末期がん患者のQuality of Life (QOL)や遺族の精神的健康に与える影響は明らかでない。そのため、具体的なアセスメント方法や支援方法が明らかではない。 本研究の主要な目的は、(1)患者・遺族のSESの違いががん患者の治療選択およびQOLに与える影響について明らかにすること、(2)患者・遺族のSESの違いが遺族 の精神的健康(うつや悲嘆)に与える影響について明らかにすることの2点である。 2年目の実績として、2018年度に実施された全国多施設遺族調査(日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団研究事業である「遺族によるホスピス・緩和ケアの質の評価に関する研究4(JHOPE4研究)」)において、本研究対象のデータ8126名分を取得し、データクリーニングと粗解析を行った。その主要な結果として3点あげる。 「(1)患者の社会経済的背景の違いが望ましい死の達成度に与える影響」については、望ましい死の達成の関連要因として、年収や同居者の有無、治療中の暮らし向きなどの社会経済的背景があげられた。つづいて「(2)遺族の社会経済的背景の違いが遺族のうつに与える影響」については、故人との続柄や現在の世帯年収などが関連要因としてあげられた。一方、(1)、(2)についていずれも効果量はほぼ認められず、粗解析で実施した単変量解析のみではそれぞれのアウトカムへの社会経済的背景の影響は大きく認められなかった。また、本研究対象者における「(3)経済的な理由により医師から勧められたがん治療の中止・変更した割合」は11%であった。 上記(1)~(3)にあげた粗解析の結果をもとに、さらに詳細な検討・解析を実施するとともに、結果の解釈・考察とのその公表を進めている段階である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
申請者自身および解析等の助言をいただく予定であった研究協力者ともに、新型コロナ感染症の拡大が継続していることによる、医療ひっ迫に伴う対応・応援業務によって、研究エフォートがさけない状況が年間を通して、断続的に生じた。さらに、関連学会や勉強会が新型コロナウイルスによって、延期・中止・Web開催されるなど、実施形態が変化したため、結果の公表も遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
粗解析の結果や1年目の文献レビューもふまえ、より詳細な解析を行いながら、結果の考察や社会への具体的な還元方法について、先行研究や関連図書とも比較しながら社会的・臨床的示唆、すなわち臨床における具体的なアセスメントや支援方法について検討する予定であった。解析は、統計解析の専門家に解析の助言をうけており、改めて、粗解析を基にした解析を実施しているところである。今後は、研究結果を国内外の学術集会や学術誌で広く発表することを計画しており、計画通りに研究を推進する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症のため、遅延が生じた研究計画について、次年度に延長して実施するため。
|