研究課題
社会経済的地位の違いによる健康格差は医療・公衆衛生学分野で広く明らかになっているものの、緩和ケア/終末期ケアにおけるアウトカムである終末期がん患者のQuality of Life (QOL)や遺族の精神的健康に与える影響は明らかでない。そのため、具体的なアセスメント方法や支援方法が明らかではない。本研究の主要な目的は、(1)患者・遺族のSESの違いががん患者の治療選択およびQOLに与える影響について明らかにすること、(2)患者・遺族のSESの違いが遺族の精神的健康(うつや悲嘆)に与える影響について明らかにすることの2点であった。これまでの実績として、2018年度に実施された全国多施設遺族調査(日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団研究事業である「遺族によるホスピス・緩和ケアの質の評価に関する研究4(JHOPE4研究)」)において、本研究対象のデータ8126名分を取得し、データクリーニングと解析を行った。さらに最終年度に追加調査としてWeb調査を行い、結果の信頼性についても確認を行った。その主要な結果として3点あげる。(1)患者の社会経済的背景の違いが望ましい死の達成度に与える影響」については、望ましい死の達成の関連要因として、年収や同居者の有無、治療中の暮らし向きなどの社会経済的背景があげられた。(2)遺族の社会経済的背景の違いが遺族のうつに与える影響」については、故人との続柄や現在の世帯年収などが関連要因としてあげられた。(3)経済的な理由により医師から勧められたがん治療の中止・変更した割合は11%であった。上記(1)~(3)にあげた解析の結果をもとに、結果の解釈・考察とその公表のため関連学会での発表や国際誌への投稿を行った。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)
Journal of Affective Disorders
巻: 316 ページ: 91~98
10.1016/j.jad.2022.08.019
Journal of Neuro-Oncology
巻: 158 ページ: 89~97
10.1007/s11060-022-04013-8