がん術後リンパ浮腫患者が対象のセルフケアプログラムの構築に寄与する基礎的知見の創出を目的として、可搬型3Dスキャナを用いて患者の浮腫症状自覚の妥当性を検討した。 第1研究では、人体模型を使って再現性のある3Dスキャニング方法を検討した。その結果、スキャン対象である上肢を前面と後面で2分割し、さらに各面をそれぞれ長軸方向に3 区分して複数回スキャンすることと、前面から後面へスキャンを遷移する際には、双方の面の接続部分を重点的にスキャンすることで安定的にポリゴンデータ取得できることが示唆された。 第2研究では、被検者を対象に(N=10)3Dスキャナで取得したデータ解析方法の信頼性を検討した。解析過程において基準点の配置は研究者の任意で行われるものの、皮膚上のマーキング部位が1つあれば、高い検者内信頼性が得られることが確認された。 第3研究では、片側性の上肢浮腫を有する患者若干名を対象に、短時間の弾性包帯法(Multilayer Bandaging; MLB)前後で浮腫症状に関する主観的評価(症状変化の自覚)と3Dスキャンシステムによる3Dデータ上の変化を比較し、主観的評価と形状変化とが一致するかを解析するPreliminary studyを実施した。その結果、3Dデータ上、MLB後の患側前腕の凹状に形状変化を示した部位と患者の認識は部分的に一致する場合もあり、患者は患肢の前腕前面においては肘窩に近い部位ほど、症状変化に自覚的である可能性が示唆された。 今後、被検者を増やすことに加えて、3DデータにおいてMLB後に凹状の変化が確認された部位の内部構造の解析が必要である。なお、本研究では研究デザイン上の制約により前腕前面に解析範囲を限定した。患者自身によるセルフアセスメントの妥当性を検討するためには、実験系のさらなる精錬が必要であることも示唆された。
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