糖尿病をもつ高齢者は一般高齢者と比べてフレイル(心身機能の虚弱および生活機能障害)になりやすい。本研究では、糖尿病高齢者に特化し、糖尿病の管理と両立可能なフレイル予防を目指して、糖尿病高齢者のフレイルに関する実態調査を行った。その結果、以下の3つが示された。1つめに、ADL(日常生活動作)が自立した糖尿病高齢者においてもフレイル発症頻度が高く、また、フレイルやプレフレイルでもBMIが低下しにくく、身体機能より先にADLが低下するなどの特徴が示された。2つめに、フレイル関連因子として、糖尿病合併症、インスリン療法、糖尿病食事療法と運動療法の取り組み方など糖尿病特有の因子が多数挙げられ、糖尿病高齢者に特化すべきフレイル予防のためのケアニーズが存在した。3つめに、性別や地域性によって、筋力、手段的ADL、社会的ADL、セルフケア行動などの低下状況と関連因子が異なるなど、フレイル予防ケアモデル立案には、特有のケアニーズを有するサブグループについて、さらに詳しい解析が必要であることが明らかとなった。 一方、糖尿病高齢者のニーズ調査では、大多数がフレイル予防指導を受けたいと希望していたが、約30%しか指導を受けておらず、その内容も糖尿病に特化していないことが明らかとなった。以上の結果を、国際誌への論文掲載や国内外の学会等で発表した。今後は、この調査結果をもとに、さらに詳細な調査、解析を進め、糖尿病に特化した、エビデンスに基づくフレイル予防ケアモデルの開発を行う予定である。
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