肥満症や2型糖尿病の患者の多くでは、高カロリーや高脂肪の食事がいけないと分かっていても止められないため、高カロリーや高脂肪の食事への依存性が生じていると考えられている。この依存性は、脳内報酬系の反応性が亢進しているため引き起こされることが知られている。しかし、ヒトにおいて脳内報酬系の反応を行動として評価する系は確立されていない。そこで、肥満患者の脳内報酬系の神経活動の亢進が、摂食行動における衝動性として現れているという仮説のを立てた。本研究は、衝動性の評価方法の一つとして知られている遅延報酬割引を用いて摂食行動における衝動性を評価し、肥満者の内臓脂肪量と食行動における衝動性の関連を検討することを目的に実施した。 2018年度は、衝動性評価のために食物刺激を報酬として用いた遅延報酬割引の測定法を構築するための基礎検討を実施した。遅延報酬割引で測定される衝動性の妥当性評価法の検討を行い、潜在連合テストに着目した。潜在連合テストは様々な社会的対象に対する潜在的態度を測定することができる手法であり、実験心理学分野で用いられている手法である。潜在連合テストの食物刺激に用いる画像の選定のため、200枚の食物画像に対して「食べたいと思うか」などの主観的な評価項目を、被検者41名に予備調査を行った。 この予備調査をもとに、2019年度より、遅延割引測定法を構築と妥当性検討、および内臓脂肪量との関連の検討を実施し、データ収集を2021年度で終了した。
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