研究実績の概要 |
本研究は、就労・育児・家事などの社会的役割を有する子宮頸がん患者について、1)診断から治療終了後1年目までに生じている療養生活と社会生活の両立に関連する困難の特徴を明らかにする。さらに2)困難と社会的背景との関連を調査し、困難が生じやすくより個別的介入が必要な対象の特徴について明らかにする。 昨年度の文献レビューで明らかになった点として、Maguireら(Maguire, Kotronoulas, Simpson, & Paterson, 2015)は、子宮頸がん患者が対象の調査に含まれる14文献(12研究)の分析から、満たされていないニーズ領域の特徴を明らかにした。サポーティブケアニーズの11領域のうち先行調査が少なかったのはスピリチュアル/存在的:死や死に向かうこと・死への恐れ・余生への恐れ(1; 8.3%)、家族関連:家族関係の機能不全・家族の将来への恐れや心配(2; 16.7%)、実用的:交通手段・リビングウィル・時間外の医療アクセス・葬儀・経済的負担など(2; 16.7%)、そして日常生活ニーズdaily living needs:日常生活の制限・家事や運動の制限(2; 16.7%)であった。特にMaguireらは、この対象への調査が、性生殖の問題を含む対人関係や親密さ、身体的ニーズに関することや、それに関連した心理・社会的な問題、または初期治療や治療段階の情報ニーズに偏っていることを指摘している。 注力すべき領域として、性生殖に関する情報関連の介入研究、治療と予後に関する質の高い情報提供や、そのための患者と医師のコミュニケーションを挙げている。先行調査が少なかった領域として、スピリチュアル、家族関連、実用的問題、そして日常生活のニーズは注目されていなかった。これらはいずれも、サポーティブケアに含まれる重要な研究課題である。
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