研究実績の概要 |
当初先行調査を踏まえたインタビューと質的な分析結果に基づいた質問紙調査を予定したが研究者の所属変更やCOVID-19のパンデミックの影響を受け、調査フィールドの確保が困難となったため代替研究として、若年成人がん患者の調査(Okamura et al., 2021)の二次分析を行った。 Okamuraらの調査では長期サバイバーシップに応じたケアが行き届かず満たされていないニード(アンメットニーズ)を明らかにするとともに、アンメットニーズと関連する要因を明らかにすることでケアの方向性を示唆することを目的とした(Okamura et al., 2021)。二次分析では、当初の研究目的に照らし、がん治療後のアンメットニーズが生じる時期と変化、アンメットニーズを生じる対象の特徴と関連要因、療養生活の両立との関連を明らかにした。 【対象背景】対象206名の平均年齢は33.7(SD4.3)歳、女性が87.4%、既婚者が50%、就労しているものが56.3%、抗がん剤治療中が7.8%であった。疾患部位は子宮・子宮頸部が38%、乳腺11%。甲状腺10%、消化管9%が続いた。診断からの期間は1年未満が16%、5年未満が51%であった。診断からの期間が1~5年未満の群で就労している割合が多い傾向があった。アンメットニーズスコアが高かったのは心理的ニーズ、医療制度/情報ニーズであった。この傾向は診断からの期間ごとに違いは認めなかった。診断からの期間を経てもニーズスコアが有意に低下せず、支援の必要性が継続していると考えられた。 【考察】診断からの時期が1年未満であっても、5年以上であっても、解決されていない課題がある。診断からの年数がたった後も、発達段階に応じたケア提供が必要であり、特に同世代の患者が少ないこの世代の支援には、ピア間での情報交換の場の提供やピアサポートを含めた心理支援が有用であると思われる。
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