本研究では、地域移行へ向けて長期入院患者と多職種からなる支援者が協働する、ひらかれた対話による意思決定ケアモデルを構築することを目的に、最終年度となる2021年度は、以下の研究を遂行した。 「多職種からなる支援者が、地域移行へ向けて長期入院患者とのひらかれた対話により、協働で意思決定をケアする過程における方法と課題」の研究において、関東甲信越地域にある精神科病院の看護師9名と精神保健福祉士8名から収集したデータを、それぞれの専門職の視点を明らかにするために、質的記述的方法を用いて分析した。精神科病院の看護師と精神保健福祉士のそれぞれの専門職ごとに、地域の支援者を含む多職種と協働で長期入院患者とのひらかれた対話により地域移行の意思決定を支援する方法と課題について明らかにした。 そして、「地域移行した長期入院患者が社会の一員として自己価値を見出す過程と安寧を満たす要因」のモデルと「多職種からなる支援者が、地域移行へ向けて長期入院患者とのひらかれた対話により、協働で意思決定をケアする過程における方法と課題」の研究を基にして、長期入院患者の地域移行や意思決定支援に関する各種ガイドラインより、地域移行へ向けて長期入院患者と多職種からなる支援者が協働する、ひらかれた対話による意思決定ケアモデルを構築した。支援者は地域移行支援チームを形成し、協働して段階的に、その人の意思決定支援プロセスを重層的に支援していた。支援者は長期入院患者との双方向性ある対話により、こころをひらけるような関係性を構築し、その人の意思を理解し受けとめ、意思決定する環境を一貫して整えることの重要性が示唆された。また、それぞれの専門職の視点より、長期入院患者の地域移行の意思決定支援における課題が顕在化した。
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