2019年度は、三次救急の場における看護師の自殺未遂患者に対する態度に影響を与える要因のうち、質的データを分析し、日本精神保健看護学会第30回学術集会にて発表した。 2020年度は質的・量的データを用いて多変量解析を行った。419名を分析対象とし、態度の合計得点を目的変数、その他の変数を説明変数とした重回帰分析の結果、自殺未遂患者に対する態度には共感性(「他者指向的反応」「視点取得」)、看護実践環境(「看護師と医師との良好な関係」)、就職後に自殺未遂患者のケアについて教育を受けた経験、自殺未遂患者をケアすることへの不安、自殺未遂患者と他の患者との比較、周囲を振り回す患者の言動、看護師の生活における個人的経験、重篤な患者の状態が有意に影響する(p<0.001,R2乗=0.26)ことを明らかにした。また、本研究で用いた尺度の一つである、看護師の自殺未遂患者に対する態度尺度の構成概念妥当性についても検討した。これらの研究成果については、第40回日本看護科学学会学術集会、第22回日本救急看護学会学術集会にて発表した。また、上記の分析を進めるなかで、精神健康度が不良と分類される看護師が約5割を占めており、精神健康度についても詳細な分析が必要であると考えられたため、精神健康度を目的変数とした分析も追加して行った。多重ロジスティック回帰分析の結果、共感性(「被影響性」)が精神健康度を不良にさせる要因(オッズ比 1.97)であり、看護実践環境(「看護管理者の力量、リーダーシップ、看護師への支援」)が精神健康度を改善させる要因(オッズ比 0.57)であることが明らかとなった。精神健康度に焦点をあてた分析によって得られた研究成果については、第22回日本救急看護学会学術集会、第33回日本総合病院精神医学会総会にて発表するとともに、日本総合病院精神医学会の機関紙「総合病院精神医学」に論文を投稿した。
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