アルコール依存症を抱える家族のリカバリーの解明のため、2段階にて研究を実施した。1段階目(課題1)「リカバリーの概念分析-アルコール依存症をもつ家族への活用-」の結果、属性は構造と機能それぞれが抽出された。リカバリーの構造的な属性は、【過程】【強い個別性】の2つが抽出された。リカバリーの機能的な属性として、【相互依存】【ポジティブシンキング】【柔軟性】【好奇心】【葛藤への抵抗力】【主導権と責任】【自己変革】の7つが抽出された。リカバリーの先行要件として、促進要因は、8つ抽出され、阻害要因は5つ抽出された。リカバリーの帰結は6つ抽出された。以上の概念分析を踏まえたリカバリーの定義は、「困難や障害がありながらも、ポジティブシンキングや好奇心を根底に持ち、何らかの葛藤が生じた場合でも、周囲の人と相互依存しながら、最終的に自己の主導権と責任の基、柔軟性と葛藤への抵抗力を発揮し、その葛藤をも貴重な絶望体験としてさらなる自己変革へと繋げ、行きつ戻りつしながら進む、極めて個別性の強い過程のこと」と定義した。 2段階目(課題2)上記リカバリーの概念分析を基に、「アルコール依存症を配偶者にもつ夫婦のリカバリーのプロセス」を明らかにした。質的な分析の結果、夫婦のリカバリーは3つの時期を経験しながら、進んでいた。具体的には、「夫婦のみの閉ざされた時期」「第三者が介入してからの時期」「新生の時期」の3つの時期である。「夫婦のみの閉ざされた時期」は夫婦システムを中心として関係性が悪化していく時期である。この時期の終盤は当事者と生活する配偶者が成長の一歩へ先導する時期であった。「第三者が介入してからの時期」は、当事者が配偶者を新生の時期に先導する時期であった。「新生の時期」はゴールがなく、夫婦が相互依存しながら成長し続けていた。以上のリカバリーの中心は夫婦の【絆】であった。今後さらなる洗練化をしていく。
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