本研究では、開発した看護師主導型オリエンテーション・プログラム(以下、本プログラム)の有用性を検証することを目的としている。 2018年度は、看護師のアウトカム評価について検討した。近年、医療依存度が高く、せん妄や認知症など認知機能が低下した高齢がん患者が増えていることから、治療の選択段階から適切に看護を実践する必要があると考え、認知機能が低下した高齢がん患者への看護実践を評価する尺度を開発した。 2019年度は、本プログラムの改訂について検討した。近年、抗がん治療の選択肢に、がんゲノム医療が追加されたことから、がんゲノム医療に携わるがん専門看護師の実践を明らかにした。 2020年度は、前年度までの知見を鑑み、本プログラムの改訂と実施可能性の検討を行った。具体的には、本プログラムでは、抗がん治療で必要な情報として8つの要素(①病気について、②治療について、③生活について、④家族について、⑤こころ(精神的な側面)について、⑥医療者とのコミュニケーションについて、⑦今後のことについて、⑧お金のことについて)にがんゲノム医療に関する情報(がん遺伝子パネル検査の流れなど)を加えた。また、がん患者の相談内容や希望に応じて、関連する部署との連携システムも構築した。プログラム改訂版の実施可能性を検討するために、研究に協力の得られた患者10名を対象に、抗がん治療選択時にプログラム改訂版を用いてオリエンテーションを行った。その結果、「(オリエンテーション前に比べ)不安が軽減された」、「今後、考えていかなければならないことが分かった」など、患者(とその家族)が今後の見通しを立てる上で、安心感につながることが示唆されたが、一方で、患者に合わせた情報の選別やオリエンテーションに要する時間配分など運用面での課題も示唆された。
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