研究課題/領域番号 |
18K17517
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
加藤 尚子 東京大学, 医学部附属病院, 届出研究員 (00711392)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 心不全 / モニタリング |
研究実績の概要 |
慢性心不全患者においては心不全増悪症状の早期発見・治療が重要であるが、心不全の増悪状態を見極めることは容易ではない。近年慢性心不全患者の体液貯留の状態を観察するためのいくつかのデバイスが開発されている。本研究では近年開発された以下の4機器を心疾患患者とその家族が利用し、その使用経験を記述した。4つの機器は、非侵襲的に肺のうっ血状態を測定できる遠隔誘導センシング(ReDS)技術を用いたデバイス、小型超音波画像診断装置(ポケットサイズエコー Vscan)、生体電気インピーダンス法を用いる方法(Beurer BF 700、体重計)、微小循環を評価するEPOSシステムPeriFlux 6000)であった。合計20名の心疾患患者と3名の家族が参加した。生体電気インピーダンス法を用いた体重計は、患者にとってもっとも簡単に測定できる機器であったが、測定したデータを転送するためにタブレット端末を使うことが難しい患者がいた。さらにペースメーカーを使用する患者等、一部の患者では使用できない。微小循環を評価する方法については、約60%の患者が在宅で自分で用いることができないと回答した。ポケットサイズエコーは、患者が自分で利用することはできず、家族のサポートを借りた場合でも、画像の解釈は難しく、利用前に患者と家族に対して十分な教育を提供する必要があることが分かった。ReDSを在宅で利用できると回答したものは約6割にとどまり、機器のベルトを留めることが難しいと回答するものがいた。以上の結果を踏まえ、いずれの4つの機器も患者が在宅で利用することは難しいと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルスの影響で、調査の準備と実施(例、対象者の登録、データ収集)に予想以上の時間を要したため。
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今後の研究の推進方策 |
現在、プライマリケアに設置された心不全専門看護外来で、心体液貯留の評価のためにReDSおよび小型超音波画像診断装置(ポケットサイズエコー)を用いた看護ケアの実施可能性について調査中である。本研究では、これらの機器が看護師のアセスメント能力の向上や心不全増悪症状の早期発見につながるかについても検討する。中間解析の結果では、ポケットサイズエコーに比べてReDSは事前のトレーニングが少なくてすみ、心不全の状態をより正確に評価できる可能性が明らかになっている。今後は、プライマリケアで治療・ケアを受ける慢性心不全患者を対象に、ReDSとビデオ会議等を用いた遠隔看護を組み合わせたセルフケアプログラムの実施可能性を検討した後、その効果を検証していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響で調査が進まず、予定していた調査費用を使用しなかった。また、新型コロナウイルスの影響で参加を予定していた学術集会がオンライン開催に変更となり、これらの理由から次年度使用額が生じた。 来年度は、今年度に実施できなかった部分の調査や予定していた学術集会への参加を計上していた予算を用いて実施していく予定である。
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