共感は、認知的側面と情緒的側面があると考えられている。看護師が患者に対して共感する際、認知的側面の一つである視点取得が重要である。視点取得とは、相手の立場にたって考えることである。本研究は、看護師に求められる共感(視点取得)を評価するための指標として作成された臨床対人反応性指標(原案)の信頼性と妥当性を検証した。 2019年度、オンラインを用いた調査を実施したが、回答者数が少なく、十分な分析ができなかった。しかし、集めたデータから項目の妥当性を検証した。回答に偏りがあった2項目を意味が伝わりやすいように直し、1項目を除外した。また、自由記述の結果を内容分析し、1項目を追加した。結果は、国際学会および国内学会で発表した。 2020年度、全国の国立大学附属病院の看護師を対象として、質問紙を実施した。質問紙は23施設819名の看護師に配布し、402名から回収された(回収率49.1%)。欠損値が多かった、または対象者の条件を満たしていなかった3名のデータを除いた、399名の看護師のデータを分析に用いた。その結果、臨床対人反応性指標は18項目2因子構造となり、信頼性と妥当性は検証された。 2020年度は、7月20日から育児休暇から復帰し、質問紙のデータを整理して論文を執筆した。現在、投稿中である。また、2021年4月国際学会で研究の一部を発表した。 この研究で開発された臨床対人反応性指標は、18項目と少ない項目で共感を評価することができる。また、臨床対人反応性指標の因子構造は視点取得と無条件の肯定的理解という2因子構造である。無条件の肯定的理解は、効果的なカウンセリングに必要不可欠であると考えられてきたが、評価できる指標は少ない。今後、視点取得と無条件の肯定的理解について研究を重ね、その効果や影響について明らかにしていくことは意義があると言える。
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